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話を聞いた生徒たちの反応は、それぞれだった。関わらなきゃ問題ないんだと安堵する者、予期せぬことがあって、やむを得ず関わってしまったらと不安になる者。桔花はその後者だ。前者の方が圧倒的に多く、全体的に口数が増え始めた。
「なあんだ、蘭ちゃん。そんなに深刻に話すこと?」
「だからさ! 怪談話す人にでもなったら? 結構、向いてると思うよ」
「言えてる! ギャハハ」
摩喜を筆頭に、スクールカーストトップ組が笑い出すと、周りも追従する。桔花と同じように、まだ安心できずにいた少女たちも引き攣った笑みを浮かべている。長いものに巻かれろ、というやつだろうか。桔花は口元を手で覆い、笑っている風を装う。あの3人、摩喜、胡桃、
「そうね、確かに脅かしすぎちゃったかも。でも、危険だってことを分かってほしくて」
「心配しなくても平気だって。誰も死なないから」
「うん、お願いよ。ちょっと先生、さざなさんを迎えに行ってくるから」
意外に早く受け入れた生徒たちを前に、蘭子は戸惑っているようだった。死を簡単に避けられると思うのは、若いからこその感覚なのかもしれない。自分たちは死から最も遠い場所で生きているんだと思いがちだ。桔花には、それがいまいち理解できなかった。
蘭子がいなくなったのをいいことに、クラスメイトたちは思い思いのグループで集まって話を始めた。校内で使用が禁じられているスマホを出して、連絡先の交換をする者もいる。桔花は特に何をするでもなく、席についたまま、前を向いていた。そこに知里がやって来る。
「留守さん、今、いい?」
気を遣ってか、そう声をかけてきた。同じクラスの仲間かつ寮の部屋も一緒だというのに、まだ他人行儀だ。となると、桔花も堅苦しい態度を崩すことができない。
「どうぞ、照井さん。こっちで話そう」
「うん、ありがとう! 何かごめんね」
謝られるようなことはされていないのに、彼女は申し訳なさそうに言う。他の生徒の目を気にしているんだろうか。だとしたら、あの少女たちの罪は更に重くなる。向こうは少し揶揄っただけだと言い張るかもしれないが、そんな話では済まされない。彼女が自分自身の価値を見失っているのだ。桔花は勇気を出して、知里と距離を縮めるべく、口を開いた。
「あの……、良かったら名前で呼んで。クラスも寮の部屋も一緒なんだし、名字呼びは寂しいよ」
最後の方は気恥ずかしくなり、声が小さくなったが言い切った。知里の反応を横目で窺うと、彼女は口元を綻ばせていた。
「えっ、いいの!? 嘘、すごく嬉しい!
留守……じゃなくて、桔花ちゃん! 本当にありがとう」
「ううん。こちらこそ、わがままを聞き入れてくれてありがとう」
2人の間に穏やかな空気が流れる。この学園にきて、初めての友人だ。桔花は心の底から大切にしようと誓った。
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