第38話 獣人国のお姫様

 フェルに髪を乾かしてもらい、立派なもふもふ姿になったユユ。今の綺麗な姿だったら、お姫様って言われても違和感はない。


「ユユは獣人国のお姫様なの?」


「はい、そうです」


 おっ、素直に応えるんだ。


「なんで国を出たの? 出なければ奴隷になる事も無かったでしょ 」


「私の父は早くも後継を探していて……それで私を結婚させようとお見合い話をたくさん持ってくるのです。それが嫌で家出しました」


「いいお父さんじゃないか」


「確かにお父様はいい方ですが……結婚相手は自分で決めたいなーと」


「あー…」


 確かに相性がいい人と結婚したいね。


 僕をチラチラと見てくるユユ。うっすら頬が赤くなっているのは気のせいだろう。

 そして……なにこの女性陣の圧。ひしひしと背中に視線を感じるんだけど。


「あのっ、クロウさんお願いがあります!」


「なんでしょう?」


 この先の展開は何となく予想できるが、知らないふりをしよう。


「現在、獣人国は4つの派閥に分かれています」


「ほう」


「東西南北、それぞれの代表者が有力な婚約者候補で、その方たちを含めて一週間後、決闘大会があるのです。お父様は大会の優勝者に私との婚約の権利を与えると言っているようで……」


 ユユはこほんと咳をし、呼吸を整え言った。


「クロウさんたちに大会で優勝してもらって、私の婚約話を止めてほしいのです!」


 

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