第56話 宝の山です
お姫様抱っこのまま部屋からでると、団長さんがしっかりと色々な事の口止めをしていた。所謂袖の下。抜かりないです。
そしてそのままの格好で神殿から出ると広場は夕市に変化していて、食べ物の屋台だとかお酒だとかが売り出していた。
流石にお姫様抱っこのままは歩けないので、神殿の階段を降りたところで漸く解放してくれた。
有言実行の男だぜ、まじでよお……。
広場は朝市と違って商人が居なくなった、と言う感じ。
出店からの食べ物の匂いに、いい匂いだなあ、と思いつつ人混みに揉まれながら先ゆく団長さんの背中に張り付いて――……壁にしていると言ってもいい――目的地まで向かう。
そう、私の真の目的……とかいったら女神様からめっちゃ怒られそうなんだけども、この時間からしか空いてなかったのとちょっと特別な許可というか資格?がいる所だったので最後にした場所だ。
「ここがこの国一番と評判の場所だ」
広場からの十字路を抜けて少し脇道に入った場所。薄暗くていかにも怪しいものがあります的な雰囲気漂うそこは……そう!魔法師ギルド!!
何故ここなのかと言うと、理由としては私の身分証の作成と買い物だ。
本当は身分証なんてものは作りたくなかったんだけど、私が求めるものが魔法師ギルドか魔導師ギルドにしか無かったから、仕方なく登録に来た、というわけ。
王宮の魔導師に言えば手に入るがそれは出来ないし、何故か劇薬とか危険物扱いになってる香辛料はギルド登録者にしかかえないのです。だから仕方なく登録しにしたのだけど。
そんな中でも魔導師より魔法師ギルドにしたのは、魔導師に比べて魔法師は特に気まぐれで人に興味が無いからギルド登録するのも大変で、元々個人で活動してるからギルド自体がいつ開くか分からないのと、単純に変人多いから王宮に避けられてるからです。ビバ!隠れ蓑ー!
ちなみに何故空いてるか分かったのかは……団長さんの情報網で、です。
入ってすぐ、薄暗い室内にぼやぁと浮かび上がるランタンの明かり。フードを被った人がチラホラいるくらいで、中はとても静か。
お化け屋敷かな?
怖々としつうもまずは受付。眠たそうなお姉ちゃん?――……フードかぶってて性別わからん――が対応してくれました。
「はぁ~い、いらっしゃいませぇ。どうされましたぁ?」
「えと、ギルド登録と買い物をしたいんですが……」
「ん~と、はいはぁい、登録ねえ……ちょっと待ってね」
そう言うと眠そうなお姉ちゃん?は足元からゴソゴソと小さな水晶を出した。
この世界に来てから一回しか見てないけど、あれは鑑定の水晶(簡易版)なのでは!?
え、そんな貴重なものがここにあるの!?
「しばらく使ってないからなあ……動くかな?」
ホコリっぽくなってる水晶にふっと息をかけると当たり前だけど舞うホコリ。くしゅんっとくしゃみをしながら、マントで綺麗にしている。
……いいんか?扱いそんなんでいいんか?
不安になったので後ろに待機している団長さんを見たけど、平然としているので大丈夫っぽい。
綺麗になった水晶を目の前に置かれる。
「じゃ、これに手をかざしてくださーい」
「はあ……」
言われた通りに手をかざすと、魔力を吸われた。すると、ふわんっと空中に私の情報が簡潔に表示された。
王宮で見たものより情報は少ないし、表示されているのは名前とかレベルとかだけの極少ないものだけ。
「ほへえ、魔力高いですねえ……んっしょ、んっしょ……ほい、できましたあ」
空中に表示されているステータスは予め隠蔽魔法で誤魔化したものだ。
これは元々貴族とかがつかう魔法で、スキル隠しやら、そう言う……ちょっと人にバレたくないな、という時に使うものだそう。
私は使えないので団長さんが使ってくれました。
魔力は平均より少し上くらいにしていたので特に何も言われなかったし、バレなかった。
それでいいのか?魔法師ギルド……。
いや、もしかしたらバレているのかもだけど、目の前の受付嬢は何も言わないし、それ込での登録なのかも?
ざっくばらんな登録体制に呆れつつも何とか登録完了。
魔法師ギルドが王宮から避けられてるのってこういうところなのでは!?
「ご自身の魔力を手の甲に集中させると印が灯りますので~……身分証提示やギルドでの買い物時にお使いください~」
「はい、ありがとうございます」
眠そうなお姉ちゃん?に礼をして席を立つ。
「無事、終わったのか?」
「はい、そりゃもうアッサリでした」
登録できないんじゃないかと心配していたけど、全然そんなことなくできたもんだからなんだか拍子抜けだ。
さっきの受付嬢はもう机に突っ伏していびきを響かせて寝ているし、本当にこれでいいのか魔法師ギルド!いや、助かるけども!!
私としては欲しいものがあればそれでいいけどさ……もう少し何かあるものなのでは?
寝ている受付嬢を尻目に、私と団長さんは薬草などが売っている方へ。
ギルドの奥まった場所にあるそこは雰囲気がもう、ホラーのそれ。
薄暗いしなんか不気味、という感想です。
普通ならこわーい!とか言う場面で殿方にくっついたりするんだろう。でも、私はそんな事しません。いくらおどろおどろしかろうが、私には宝の山に見えるのだ……なぜなら。
「んわああ! 見える、見えるぞおお!!」
スキル、鑑定を取得したからです!
mamazon最高!
夢の中で女神様とあーでもない、こーでもない、と話しながら会得したスキルです。
私の固有スキル、mamazon。
これはお金や魔力などを対価に異世界のものやスキルを交換出来るというもの。
だけどこれね、簡単にホイホイ使えないのよね。スキル取得だけで目ん玉飛び出るほどのお金と魔力がかかるから。まあ、スキルで人生変わっちゃうから仕方ないっちゃないけども。幸い私はお金稼いでたから取得出来たけどそれでも二つしか購入出来なかったのでしばらく封印だね。
それとは別にサポートAIのビーグル!私にはこちらの方が便利でメインなのだ。
試したところ、向こうの検索サイトであるビーグルがそのまま来たというか……お料理に特化している感じだ。mamazonから買えばもっと機能アップするみたいだけど、今のところ困ってないし、する必要もないだろうと思っている。
まあ、スキルは追々自分で確かめるとして、鑑定ですよ!鑑定!
かねてから欲しかった鑑定スキル、まさかこんな形で取得できるとは!
今まではルーに聞いて言語変換できていたものはそのまま使ってたけど、よく分からないものは放ったらかしか使わないって選択しか無かったからね。
鑑定スキルあればなって思ってたから高くても買いましたよ!
「バジル……胡椒……ナツメグ……ローリエ……ふふ、ふふふ……」
乾燥された葉っぱ、と人は言うだろう。
しかし、しかし!鑑定様にかかればなんのその。欲しかった香辛料がたくさん!ここは!宝の山じゃあ!!!
手当り次第目につく香辛料や薬草を、これみよがしに使ってねと乱雑に重ねられた籠の山のひとつをとってからその中に入れる。
そして忘れちゃならないのが種。
ここぞとばかりに私は買った。
そりゃもう、買いまくりの漁りまくりです。
今まで、香辛料や薬草は王宮の魔導師塔の所にしか無いと言われてたし、王宮に絡まれたくない私は入手を諦めていたんだけど、ギルドに所属してしまえば買いたい放題だ。
これでまた、私の美味しいものか食うべたいと言う欲求が満たされるのだー!
心行くまで買い物ができた私は、大荷物をバックパックにつめて、気を使ってギルドの外で待っていてくれた団長さんの元に戻った。
「いい買い物は出来た……みたいだな」
ニコニコ顔の私を見て、団長さんは察して質問を打ち消した。
「はい! これでまた美味しいものが食べられますよ!」
「そうか、期待してる」
ぷっ、と笑いながら頭を撫でられる。
絶対色気より食い気とか思ったんだろうな。
今日の大体の目的は団長さんのおかげで全て滞りなく果たせたし、安心したらお腹が空いた。
気付けば夕方、夜の帳。
もう帰るかな?と思っていたら、団長さんに手を握られる。
「ケイが良ければ、もう少し付き合って欲しい」
「いいですよ。私の用事は終わりました……と言うかそれメインになってしまいましたけど」
申し訳ない、という前に団長さんは「楽しかった」と言ってくれたのでそれ以上は言わず、笑い返した。
夜の街の、幻想的な雰囲気に飲まれるのも悪くないな。
そう思いながら私も団長さんに握られた手を握り返す。
どことなく嬉しそうな団長さんの雰囲気が伝わった気がしたけど敢えて確認しなかった。
その後は団長さんのエスコートでオシャレなBARみたいな所でお酒を飲んで、ゆっくり過ごした。
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