お疲れ様会 2
「うへへ、冬夜〜?飲んでる〜??」
「あぁもう!くっ付くな!」
「えー?いいじゃーん、これぐらい」
「大輝!頼むから引き剥がしてくれ!」
「ほら、夏葉ー、追加のお酒あるぞー」
「あ、飲む飲むー」
焼肉を始めて30分、案の定夏葉が酔った。そしてダル絡みを始めた。
「七草くん、食べてますか?」
「えぇ、春香先輩もちゃんと食べてます?」
「はい、七草くんが焼いてくれてますから」
「まぁ俺が焼いたの食べてるの2人だけですけどね」
「綾香ちゃんと私だけですからね」
「白石先輩と駿河先輩は完全に取り合ってますからね……」
「あの2人を隣に座らせたのは間違いでしたね」
昔の生徒会でもよく言い合いになっていた。これはこうした方がいいとか、これはこっちの方がいいとか。それを宥めるのが大変だったのを覚えている。
春香先輩と話しつつ肉を焼く。焼いたそばから無くなっていくのを見ると綾香が凄い勢いで食べている。
「綾香……喉に詰まらすなよ?」
「だいじょうぶらよ?」
「……酔ってないよな?」
「んんっ、酔ってないよ」
「ジンジャーエールだもんな」
「そうだよ、ジンジャーエールじゃ酔わないよ」
「世界には雰囲気で酔う人がいるんだぞ」
「ウィスキーボンボンとか?」
「あー、あれな」
よくラノベとか小説で見るけどウィスキーボンボンって酔うのだろうか。あれがどれだけアルコール含んでるか知らないけど多分結構食べてるから酔うんだよな?簡単に酔うわけじゃないよな?
「私はお酒は成人しても飲まなさそうだなー」
「そうなのか?」
「だって苦かったし」
「あー」
爺さんの屋敷の時にされたことを思い出して色々複雑になる。にしてもキスで口移しで酒飲むのが初めてって相当な経験だな。
「お酒にも色々種類がありますし飲んでから決めればいいと思いますよ」
「チューハイとかサワーとかなら飲めそうだよな」
「その辺は飲みやすいって聞いた事あるかも」
「飲んでみます?」
「へ?」
「1口ぐらいなら大丈夫でしょう」
春香先輩がグラスを綾香にさし出す。確か中身はライムサワーだった気がする。
「じゃあちょっとだけ……」
綾香が恐る恐るグラスに口を付けて中身を飲む。
「……ん、おいしい!」
「そうでしょ?でもこういうの飲みすぎると夏葉さんみたいに酔うから気をつけてね」
「サワー系は怖いよな、意外と度数高くて簡単に酔うからな」
「私も大学の新歓とか気をつけてましたね」
「あー、やっぱそういうのあるんです?」
「えぇ、もちろん飲める歳になってからなのは前提でしたが……飲めるようになってから誘いが鬱陶しかったですよ」
「春香さん美人ですもんねー」
春香先輩は綺麗系だけど、身長が低いからちょっと神秘的な印象がある。男ならまぁ物にしたいとか考えてもおかしくはないよな。
「まぁ私彼氏いるって嘘ついて全部躱しましたけど」
「えっ!春香さん彼氏いるんですか!?」
「いませんよ?」
「綾香、嘘ついたって言ってたろ」
「あ……いやー、恋愛となるとつい」
「ふふ、気持ちはわからなくないですね」
……もしかしてたまに呼び出されたのって偽彼氏としての役目があったのだろうか。
「七草くんどうかしましたか?」
「いや、なんでも」
ちょっと顔を見すぎたせいで気づかれてしまったかな。
「私、綾香さんに謝らないといけないことがあるんです」
「謝る?」
「えぇ、大学生の時に七草くんを彼氏役に呼んでたので」
「やっぱりそうだったんですね」
「はい、七草くんにも理由言ってなくてすみません」
「いいですよ、それぐらい」
「私もそれぐらい気にしませんよ」
「ありがとうございます」
会話に一区切りついてふと隣を見ると夏葉が大輝に膝枕で寝かされていた。……既に酔いつぶれたのか。
駿河先輩と白石先輩の言い合いも収まって肉を食べている。大輝が焼いたのを2人で食べている。
「さて、七草くん。私ちゃんと酔ってもいいですか?」
「え?」
「帰りよろしくお願いしますね」
「いや、春香先輩?」
「さて、何を飲もうかなー」
「加減はしますよね?しますよね??」
タブレット端末で注文を済ませていく。おつまみにする用のキムチとかそういうのも頼みつつお酒も頼んでいく。
「……春香先輩の家知らないんですけど」
「それは愛梨に聞けばいいですよ」
「そういうわけにもいかないんですよ」
「まぁ私のことは好きにして下さい」
「……は?」
その言葉はよくない。いくら好きだったとはいえ、告白されたとはいえ、綾香がいるとはいえそういうことを言われるとかなり心臓に悪い。
「綾香、もし春香先輩が酔ったら頼む」
「任せてー」
本人の許可を得ていても家にいくのは気が引けるしな。増してや入るなんて無理なのでそういう時は綾香に頼むとしよう。てか白石先輩がやってくれると嬉しいんだけど。
本当な車なりで送れればいいんだけど綾香以外お酒飲んでるし無理だろう。
「さ、七草くん。飲みますよ」
「知らない間に俺の分まで頼んでたんですね」
「ええ。では、乾杯」
「……乾杯」
まるで内緒話をするように音頭を取る。綾香に視線ですまん、と謝りつつ俺は酒を呷る。
「冬夜くん、私ともしよ」
「ん、いいぞ」
「じゃあ、乾杯」
「乾杯」
綾香のグラスと音を鳴らして一緒に飲む。その一瞬だけは周りを忘れて2人きりでいるような感覚になれた。
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