バーベキュー


 昼になり1度コテージに戻って身体を拭いたり、着替えをしたりしてバーベキューの準備をしている所に行く。


 バーベキューは爺さんが言い出したことで準備等全てをやってくれた。


「もう食べるか?」

「綾香たちが来てからにするよ」


 網の上では既に肉や野菜がいつでも食べられるぐらいのいい具合になっているが俺は綾香たちが来るまで我慢する。


 代わりにその肉たちは一緒に遊びに来ていたメイドさん達のところに行った。


 彼女たちは住み込みでバイトとして働いてる大学生らしく今日は随分と楽しんでいた。大学生しながらメイドとか時間足りるのだろうか。ちょっと気になるな。


「冬夜くん、お待たせ」

「ん、準備は出来たか?」

「うん、バッチリ。沢山食べるよ!」

「ならよし、それはそうとしてポニテ似合ってるよ」

「何気に初めてかな?」

「だな、日頃は髪あんまり纏めてないし」

「だねー」

「ちょっと大きめのシャツ来てて水着が透けてるのもグッド」

「冬夜くんも筋肉がちょっと見えてるのとってもよきです」


 お互いのいい所を褒め合っていると横から焼けた肉が出てくる。


「ほら、いちゃつく前に食べろ」

「わかってるよ。ありがと」


 テーブルの上に肉を置いて綾香と同時にいただきますと言ってから食べる。


「ん〜!おいし〜!」

「やっぱこういう雰囲気で食べるのは違うな」

「だね〜、翡翠ちゃんたちはまだかな?」

「もうすぐ来そうだけど……あ、来たぞ」

「翡翠ちゃーん、早くおいでー」


 綾香がブンブンと手を振って翡翠と花梨さんを呼ぶ。


「綾香ちゃんポニテにすると雰囲気変わるねー」

「そうですか?」

「ええ、新妻身が増すわ」

「に、にいづま……」

「お姉ちゃん可愛い」

「翡翠ちゃんは優しいねー、お肉あげるよ」

「……?ありがと」


 新妻と言われたことに若干のショックを受けているようなのでちょっと聞いてみることにする。


「新妻って言われて嫌なのか?」

「……どんどん高校生から離れてる気がして」

「あー……あぁ……」

「だよね、冬夜くんもわかるよね」

「すげぇわかる。俺よく考えれば高校生として扱われたことほぼないな」

「それは貴方たちが大人以上に大人だからいけないのよ」

「「家事もまともにできない人に言われたくないです」」

「すみませんでした……」


 最高のカウンターを喰らった花梨さんは椅子に座って肉をパクパクと食べ出す。一方翡翠は野菜中心に食べている。原因は花梨さんが肉しか食べないからだが。


「翡翠なにか食べたいのあるか?」

「ましゅまろ?が食べたい」

「……なんでマシュマロ?」

「焼いて美味しいもので視たらあった」

「検索の仕方が贅沢だな」

「楽しみだったから」

「わかった、マシュマロだな。どうせ爺さん用意してるだろうし頼んでくるよ」

「ありがと」

「綾香、翡翠の世話頼んだ」

「はーい」


 綾香に翡翠を任せて爺さんのところに向かう。と言ってもそこまで離れてないから直ぐだ。


「あ、梨菜さん」

「冬夜様、えっと……楽しんでます?」

「会話に困った時の究極系みたいなの出してきましたね」

「……関係性が絶妙過ぎて難しいです」

「そんなに歳が違うわけでもないから友達感覚でいいですよ」

「いえ!冬夜様にそんな態度をとるわけにはいかないので!」

「……俺なんかしたっけ?」

「この家にいる使用人で若いのは冬夜に感謝とかしてるだろ」

「爺さんが集めたのか」

「まさか。七草って名前から来たんだろ。ついでに給料いいし」

「下手な会社よりはいいよな。ここのバイト」

「住み込みだからずっと働くようなものだしな、悪いと人がこん」

「ついでに山の上だもんな」


 梨菜さんの方を見るとなにか言いたそうにモジモジしている。これ俺から聞くべきなんだろうか、と迷っていると意を決したのか口を開く。


「記憶にないとは思いますが、冬夜様にはものすごく感謝してます。今更ですがありがとうございました」

「……ほんとに覚えがないんだけど」

「私は直接ではなく間接的にだったので」

「そうなんだね」

「はい」


 間接的にということは恐らく高校の時だろうな、と想像をつける。


「冬夜、次の焼けたぞ。翡翠のマシュマロも付けてる」

「ありがと」


 それらを受け取って俺はテーブルに戻る。


「あの……手伝いましょうか?」

「これぐらい大丈夫だよ」


 紙の皿5枚分程度なら1人でも問題なく運べるから断っておく。飲食店のバイト経験はないけど文化祭の喫茶店ならやったからな、そこで身につけた。最終的にはパフォーマンスみたいになったのが懐かしい。


「次の持ってきたぞー」

「ありがとー」

「翡翠のマシュマロもあるぞ」

「ましゅまろ!」

「随分楽しみだったんだな」

「さっきまで綾香お姉ちゃんに美味しさを教えて貰ってたから」

「じゃあ沢山食べてくれ」


 バーベキューで肉じゃなくてマシュマロを沢山食べるのは普通なら色々言われそうだがここはそんな事を気にする人はいないし存分に楽しんで貰いたい。


「花梨さんは肉以外も食べてくださいよ」

「気が向いたらね」

「肉しか食べる気ないですね。後そのビールはどこから持ってきたんですか」

「向こうのクーラーボックスに入ってたわよ」

「そうなんですね」

「冬夜くん飲むの?」

「あるなら程々に飲みたいな」

「冬夜くんが酔ってるの見てみたいなー」

「酔ったことないから難しいかもな」

「冬夜ってどれだけ飲めるの?」

「さぁ?昔親父に限界知っとけって言われて飲まされても先に親父が潰れたんでまだ知らないんですよね」

「……冬夜もしかして酒豪?」

「かもしれないですね」

「その時はどれぐらい飲んだのー?」

「えっと……缶ビールが5本と。焼酎を1L。あとよくわからんワインを1本だな」

「お腹タプタプにならない?」

「なった、めちゃくちゃ重かった」


 あの時はほんとに大変だった。夜中まで飲まされた上にそんだけ飲んだからトイレに何度も行くはめになったし。


 後翌日の酒臭さがしんどかった。大学が無かったからよかったけど朝イチで風呂入ったしな。


「じゃあ度数高めの飲ますしかないか」

「花梨さんは何をさせる気なんですか」

「酔った冬夜とか見てみたいじゃん」

「私もちょっと気になるかも」

「……視てみる?」

「翡翠は絶対に使うなよ」

「わかった」


 マシュマロをハムスターの如く食べていた翡翠がとんでもない事を言ったのを速攻で止める。


「翡翠ちゃん教えてくれたりしないかなー」

「綾香、知りたいなら飲んで酔うからそれはやめてくれ。恥ずかしい」

「そんなこと出来るの?」

「どうにかすれば」


 よく分からない話になりながらもバーベキューの時間は進んでいく。


 それからバーベキューは3時ぐらいまでだらだらと続いた。

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