祝日の2人
7月の第3月曜日、それは海の日という祝日だ。
この日は仕事も休みで今まで通りなら俺は昼ぐらいまでベットでゴロゴロしてしたのではないだろうか。ただ今は綾香がいる。だから多少は違うかな?と期待を込めていたんだけど……
「すぅ……すぅ……」
「なんでここ寝てんの」
休みとはいえ洗濯物はある。それだけ済ませてからもう一度寝ようと思ってベットを出て終わらせて部屋に戻ってきたらこれだ。なぜか綾香が俺の部屋で寝ている。
「……部屋でも間違えたか?」
そう言えばさっきトイレの方で音がしてたことを思い出して多分部屋を間違えたんだろうということを考える。
「ふわぁ……」
完全に二度寝する予定だったため眠気が襲ってくる。もうこの際なんでもいいやとどうでもよくなって俺はベットに潜り込む。
そして綾香を抱いて目を閉じた。
胸元で何かがもぞもぞと動く感覚がして目を覚ます。カーテンを閉めているけどそれを超えて光が入ってきていて結構寝たことを自覚する。時計を見ると10時を示していて、体がすっきりしていることもわかった。まぁよく寝れた理由は別にあると思うけど。
相変わらず綾香は俺の腕の中で幸せそうな顔をして寝ている。その姿が愛おしくて頭に手を伸ばしてゆっくりと撫でる。
サラサラとした髪の感触と温かさが伝わってきてこっちまで頬が緩んでしまう。俺は頭を撫でていた手を徐々に顔へと移していき頬のあたりをつつくようにさわる。今度はぷにぷにとした感触とともに押し込んだ指がやんわりと押し返される。
「かわいいな……」
頬をつつくたびに綾香の表情も緩んで可愛い顔を見せてくれる。それをみて俺はどんどん違うことがしたくなってきていろんなとこをつついたりしてみる。
そんなことをしていると当然綾香も目を覚ます。
「んぅ……?」
「ん、起こしちゃったな」
「おはよー?」
「うん、おはよ。今10時だけどまだ寝る?」
「うー……」
どうやらかなり寝ぼけているらしく色々と整理が追い付いていないみたいだ。ちょっといいことを思いついたので試してみることにする。
「ほーら、捕まえられるかなー?」
目の前で小っちゃいぬいぐるみを揺らしてみる。これは綾香から貰ったものでいつも枕元に置いているやつだ。
「にゃっ!ふにゃ!」
「捕まえないと逃げちゃうぞー」
「うにゃ!」
完全に猫になっていることに笑いをこらえながらぬいぐるみを揺らし続ける。そして揺らし続けること数十秒。
「うー……みゃ!」
「うおっ」
綾香が胸に飛び込んできて後ろに倒れそうになるのを何とかこらえる。飛び込んできた綾香はそのまま抱きしめて抱える。
「うへへ……」
「変なにやけ方をするなよ」
「だって、うれしいんだもーん」
「目は覚めたか?」
「おかげさまで」
「そっか」
胸に抱きかかえたまま綾香の頭を撫でつつ話す。
「そういえば私なんでここにいるの?」
「え、知らないけど」
「うーん……」
「夜中にトイレとか言って部屋間違えたとかじゃないのか?」
「かな?あんまし記憶ないけど」
「ないのか」
「うん、起きたような気はしてるけどあんまり覚えてないな」
「なんでもいいか」
「うん、冬夜くんがいるならなんでもいいよ」
その言葉が嬉しくて俺はより自分の方に綾香を引き寄せる。それに頬を染めていっそう縮こまる。
「ほんとに可愛いな」
「急にそういうのはだめ」
「なんで?」
「だって恥ずかしいじゃん」
「いいじゃん、二人きりなんだし」
「むー……反撃するよ?」
「お好きにどうぞ」
そういうと綾香は体を回転させて俺と向き合う。そのまま顔を近づけて唇が触れる寸前で止まる。お互いの息がかかる距離だ。
「口開けて」
「えー」
「ほら、はやく」
「ん、仕方ないな」
軽く口を開けると綾香がそれを塞ぐようにキスをする。さらに綾香の舌が入ってきて俺の舌と絡み合う。一瞬できる僅かな隙間からキスの音がもれ、部屋からそれ以外の音がなくなる。
「んっ、ちゅっ……もっと抱きしめて?」
「ああ」
さらに綾香を引き寄せて全身でお互いを感じる。そしてもう一度キス。溶け合うような感覚が全身を巡り力が抜けていく。
気づけば綾香に押し倒されるようにベッドに倒れていた。
「冬夜くん……好き、もっとしよ?」
「俺も好きだよ、もっとしたい」
そこから止まることなくキスだけで愛を伝え続ける。唇だけじゃなくて首や肩なんかにもキスをする。少しだけ服をはだけさせて胸の辺りにもした。
前は乱入で止められたけど今回はそんなことがない。2人とも気が済むまでお互いを貪り続ける。
気づけば1時間も経っていた。
「はぁ、はぁ……まだ足りないよ?」
「次はどこがいい?」
「もう1回唇がいいな……」
「わかった……」
綾香に身を委ねて再びキスをする。残念なのは俺から出来ないことだろうか。早く自分からしたい。綾香のことをドロドロに溶かしたいそんな欲望が湧き上がってくる。
「好きだ、大好きだ」
「っ〜〜〜!!」
「愛してる、綾香のことをめちゃくちゃにしたい」
その欲望は言葉となって現れる。以前にしたように耳に近づいて愛を、いや俺の気持ちを伝える。
「もっと蕩けて欲しい。もっと色んな表情がみたい」
「っ……ぅん」
綾香を抱きしめて伝え続ける。それは綾香が幸せでオーバーヒートを起こしていることに気づくまで続いた。
結局自分からキスはまだしなかった。どうせなら特別な時まで取って起きたいしな。
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