2人の世界


 ーー冬夜ーー


 いつもと同じ時間に起きて家事をする。綾香達は昨日の疲れとかあるだろうし起きるのは遅いだろう。


 というか俺が寝たのが日付変わってすぐだったけどその時はまだ話し声が聞こえていたので多分そこそこ夜更かししてる。


 その想像通りに起きてきたのは10時前だった。先に詩乃ちゃんが起きてきた見たいで、綾香はまだ寝ているらしい。なんで詩乃ちゃんだけ来たかというと。


寝言で惚気けて来るから一緒にいづらい」


 らしい。綾香は寝言で何を言っているんだ。後、昨日まで綾香さん、だったよな?ちゃん呼びになってるじゃん。


 進展の速さにちょっと驚きつつも大変だったなと詩乃ちゃんを慰めつつ朝ごはんを作る。簡単なものなら食べれるとのことなのでフレンチトーストを作っている。


「できたよ、飲み物はどうする?」

「牛乳ありますか?」

「あるよ」

「それでお願いします」

「あいよ」


 コップに牛乳を入れて詩乃ちゃんに渡す。ありがとうございす、と言ってからコクコクと飲む。


 寝起きでまだ意識がはっきりしてないのかどこか抜けている感じの詩乃ちゃんがチラチラ色々と見えそうで困る。パジャマ姿で雰囲気が緩いと言うのもあるのだろうか。このままだと変に意識してしんどいので場を離れることにする。


「ちょっと綾香起こしてくる」

「わかりました」

「ゆっくり食べてていいよ」


 そう言って俺は綾香の部屋に逃げる。綾香の部屋に入るといつもの如くぬいぐるみとかが綺麗に配置されていてすこし安心感に満たされる。


「おーい、朝だぞー」

「んむぅ……」


 寝返りをうって聞こえませーんという感じにそっぽを向く。


「うへへ……とうやくん……」


 しかも寝言でなんか言ってる。これが詩乃ちゃんの言ってたやつか、と納得しつつちょっと聞いてみる。


「そんなとこさわっちゃだめだよぉ……」


 夢の中の俺なにしてんの?


「ほらこっちならいいよ〜」

「どっちだよ」


 ついツッコミを入れてしまう。俺は一体なにをしてるんだ?ますます気になってしまう。


「かわいいね〜……よしよし」


 そこまで聞いて1つの仮説ができる。もしかして俺あやされてね?と。それが合ってるかどうか別としてさっさと起こさないと詩乃ちゃんを待たせることになるので俺は綾香を起こしにかかる。


「起きろー」


 ペシペシと頬を叩いてみるが起きる気配はしない。


「はぁ……起きないとキスするぞ?」

「えっ!?あだっ!?」

「……痛てぇ」


 耳元で囁いていたせいで飛び起きた綾香の頭突きをくらってしまう。俺はそのまま後ろに倒れて綾香はもう一度ベットに倒れ込む。


「もうちょっと静かに起きてくれよ……」

「だってキスするって言われたし……」

「そんなに反応する?」

「そりゃするよ!冬夜くんからの初キスだよ!?」

「なんか……すまん」


 結構本気で言っているっぽいので謝っておく。たしかにそれをダシにしたのは悪かったなと反省する。


「目が覚めただろうしなるべく早く起きてこいよ」

「んー……ちょっとこっち寄ってきて」

「なに?」


 綾香の手が届く距離まで近づいた瞬間グイッ、と引っ張られてベットに引きずり込まれる。さらに綾香は自分の身体を引っ張った勢いで身体を回転させて俺を下にして馬乗りになる。


「えっ?」

「ふふーん、さてこれで冬夜くんは動けないよね」


 無理やり動くこともできるがそんなことをすれば当然綾香が落ちる。完全にしてやられた。


「それじゃあ……」

「なにをする気だ」

「ん〜……とりあえず服脱ごっか?」

「は?」


 そう言うと俺のシャツのボタンをぷちぷちと外していく。その下にはなにも着ていないので肌が露出する。


「おぉー」

「おぉー、じゃない!」

「いい身体してるね」

「ありがとう……って違う!」

「あはは、忙しいね」

「誰のせいだと」


 幸いにも服はお腹を露出させたところで脱がされるのを止めてもらったが……以前なにをされるかわからない状況である。


「ってなにしてんだ」

「お腹つんつんしてる」

「……楽しいかそれ?」

「結構楽しいよ?」

「俺はくすぐったいんだけど」

「我慢して」

「わがままなお嬢様みたいになってるぞ」

「今はそんな感じだよ」

「合ってるのか」


 合ってたことに嬉しいような嬉しくないような感情を抱きつつお腹をつんつんされることに耐える。


「じゃあ次は……」


 つんつんするのを止めると綾香は倒れてきて顔が触れそうになるぐらいまで近づく。綾香が上にいるから髪がまるでカーテンのようになって俺たちを覆う。


「いただきまーす」

「毎回それいっ……ん……」


 ツッコミを最後まで聞き入れられることはなく口を塞がれる。少し短めのキスをして、一度呼吸を挟んだ後もう一度キス。今度は長いキス。数えてはいないけど1分ぐらいに感じられた。


「朝からこんなことしてると大変だね」

「そう思うならどいてくれ」

「やだ」


 そう言うと今度は首元に噛み付いてくる。はむはむと甘噛みをするように俺の首に痕を付ける。絶対後でめんどくさいことになると確信しながら綾香を受け入れる。


「んっ……」


 僅かな抵抗として俺も綾香の首元に噛み付いて痕を付ける。


「はぁ……私に痕つけちゃダメだよ?」

「俺にはつけてくるのに?」

「今日はわがままだからダメなの」

「理不尽だ……」

「だからお仕置」


 そう言うと抱きついてきて綾香の胸が顔に当たる。寝ている時に下着を付けていないからか柔らかい感覚で顔を包み込んで息が出来なくなる。


「あやっ……もがっ」

「あんっ、喋ったらくすぐったいよ?」


 わざとらしく声を上げて反応するが一切離れてくれず徐々に呼吸が浅くなる。


 が突然ドサッという音が聞こえて俺たちの動きが止まる。綾香が振り返るため離れてくれて、その間に呼吸を整える。


「えっ、あの……お、お邪魔しましたーー!!!!」

「あっ、詩乃ちゃん待って!多分絶対勘違いだから!待って!!!」


 走り去った詩乃ちゃんを綾香が追いかけていく。ようやく呼吸が整った俺は乱れた服装を直して立ち上がる。


「感触残すのはダメだろ……」


 さっきまでの感覚が忘れられず俺は結局ベットに座り込んで綾香が戻ってくるまで自分の精神を落ち着かせるのだった。

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