綾香の休日


 ーー綾香ーー


 目が覚めて時計をみると10時を回っている。昨日のように冬夜くんに会うことはないなと思ったけど服はきちんと着て、鏡で髪とか確認してからリビングに向かう。


 リビングの机の上に書き置きがあってそれを読んで朝ごはんを食べる。書き置きといっても食べておいてほしい物とか、買い物を頼むとかその程度のことだ。


 買い物はお昼に行こうと予定を立てて私は朝の時間を過ごす。


「……昨日私いつ寝たんだろ?」


 起きてからずっと疑問に思っていることがあって、私は昨晩いつ寝たのかだ。少なくとも自分の足でベットまで行った記憶がないし、そもそも冬夜くんとイチャついていた記憶が最後だ。


「……多分絶対やらかしてるよね、私」


 こういう記憶がない時はだいたいやらかしてるのだ。しかも昨日は一日上機嫌だったから不安しかない。冬夜くんにが帰ってきたら聞いてみたいけどちょっと怖い。


「とりあえず宿題でもしてようかな……」


 朝のごはんを食べ終えた私は現実逃避もかねて宿題に取り掛かった。






 お昼を回って宿題にも一区切りついたのでお昼ご飯を作り始める。こういう一人の時のお昼は大体パスタになる。麺はレンチンすればいい容器にセットして温める。ソースもインスタントのを使って楽に作る。


 後は麺が出来上がったところにソースをかけたら、簡単でお腹を満たせるお昼ご飯の完成だ。


「いただきまーす」


 フォークにパスタを絡めてパクパクと食べ進む。誰とも喋らないのでものの数分で食べ終わってしまった。


「なんかさみしいなぁ……」


 文化祭でずっと誰かといたし、昨日はずっと舞い上がってて気にならなかったけど、今日はちゃんと一人ってことを実感してさみしくなる。


「早く冬夜くん帰ってこないかな」


 あなたの恋人が寂しがってますよ~、なんてぼやくけど冬夜くんが帰ってくるわけでもないから虚しくなる。


 さっさと買い物を済まして、洗濯物も畳んで晩御飯の準備して冬夜くんの準備を待とうと決意する。とりあえずお昼ご飯の洗い物から始める。それが終わればメモにあった買い物をするため外行きの服に着替えて家を出る。


「あっつい……」


 7月も半分が終わった今の外はかなり暑く一瞬で汗が出てくる。スーパーまで近くて助かったと思いつつカンカン照りの外を歩く。買うのは外の気温に影響されないのもよかった。多分影響されるのは冬夜くんが車で買いに行くんだろうけど。


「次は……こっち」


 エアコンで冷えた店内を歩きメモに書いてあるものをカゴに入れていく。全部入れたところで私の中にちょっとした欲が出てくる。暑い中買い物したんだしアイスとか買ってもいいよね?という欲が。


 冬夜くんなら買ってくれるだろうし、誰にも止められることはないんだけど一人で買い物をしている時はちょっと冒険するような気持ちになってワクワクしてしまう。


「何買おっかな〜」


 アイスのコーナーやスイーツのコーナーを回って食べたいものを探す。するとスイーツのコーナーの1部に目を惹かれる。


「このプリン食べたい……!」


 上に生クリームが乗っていたりちょっとトッピングが多い高めのプリンに目を惹かれてそのままの勢いで丁寧にカゴに入れる。


 そしてレジに向かい精算を済ませ、プリンは保冷バッグに入れて傾いたりしないように家に帰る。


「帰ったらプリン〜♪」


 スキップでもしたい気分だけどしたらプリンが崩れそうなのでなるべく早くかつ崩れないように家に向かう。


 それだけ上機嫌になっていて帰り道は暑さは一切気にならなかった。






 家に帰ってまず食材をそれぞれ片付けてプリンも冷蔵庫に入れる。


「まずは家事を終わらせなきゃね」


 洗濯物を取り込んで、いつもの倍ぐらいのスピードで畳んで片付けていく。それが終われば掃除機を掛ける。


 この際だからと念入りに家中を掃除する。ご褒美があると人はやる気が出て普段しないことまでしてしまうのだ。


 私はプリンを最大限楽しむべく家事をこなしていく。掃除を1時間程したところで流石に終わろうと思うまで掃除は続いた。


「さて……家事は終わりかな?」


 やる事が完全に終わったのを確認してプリンを食べようと手を伸ばす。けどその直前で1つの事が頭をよぎって手が止まる。


「……冬夜くんと食べたらもっと楽しいよね。うん!そうしよう!」


 自分に買ったご褒美とはいえ恋人と一緒に食べるならもっともっと楽しくなるだろうと思い冷蔵庫を閉める。それにご褒美なら最大限自分にいいようにしなきゃね。


「休憩したら晩御飯作ろっと」


 飲み物だけいれてソファに座る。ドラマ1本分ぐらいの時間はあることを確認してテレビを付ける。


 それからは冬夜くんと一緒にプリンを食べることを想像してニヤつきながら1人の休日を過ごしたのだった。

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