文化祭の衣装
ーー綾香ーー
文化祭でやることが決まり私たちのクラスは無事喫茶店になった。
昔から喫茶店とかの王道の物はずっとやっていたからメニューなどはそれをほぼパクる形でやるらしい。その方が衛生管理とか保健所がどうこうとか気にしなくていいらしいし。
いま問題になっているのは衣装関連で、制服でやるのかそれとも他の服装にするのかだ。1番意見が多いのは女子はメイド服。男子は執事服だ。
もちろんメイド服は露出が限りなくないものにしないといけない。服の調達さえ出来ればそれで決まるのだがそこが未だに決まっていない。
「調達するのになにか伝手がある人いますか?」
実行委員になっている私は司会をしていて聞いてみるがいい返事は帰ってこない。
「あの……出来るかわからないけど聞くだけならできます」
すると1人の生徒がそう言ってくれる。それをキッカケに何人かの生徒、主に服飾部に所属している生徒が手を挙げてくれる。
「それぞれ何着ぐらい用意できる?」
全員に現時点でどれぐらい用意出来るかを聞いて行く。
全員に聞いたところ各5着ほどが集まることはわかった。まぁメイド服と執事服両方あることなんてほとんどないし集まった方ではないだろうか。
「けどちょっと足りないね」
「だねー、人が来たのを使い回すのはしたくないしね」
「それぞれ10はいるかな」
もう1人の実行委員の紫乃ちゃんと相談する。洗濯して翌日渡すならともかくその日着ていたのを回すのは抵抗があるだろうから1日分は余裕が欲しいところ。
「……あ」
「どうしたの淡水さん」
「私もしかしたら借りれるかも」
「そうなんですか?」
「確証ないから連絡取らないといけないけどね」
「今すぐとれますか?それとも昼休みとか」
「うーん……昼休みかな」
「分かりました。では衣装についてはここまでにして内装を決めていきましょうか」
「そうだね」
そうして残りの時間は喫茶店の内装をどうしていくかを決めていった。
お昼休みになってご飯を食べた後私は服の伝手がある人に連絡を取っていた。
「あ、もしもし」
『もしもし、聞きたいことってなんだ?綾香』
そう、その相手は冬夜くんである。
「冬夜くんのおじいちゃん家って執事服とかあったよね?」
『あるな、メイド服とかあるぞ』
「それ借りれたりする?」
『多分出来るけど……文化祭で使うのか?』
「うん、私達のクラスで使いたいの」
『ならもっと借りやすいとこあるぞ』
「へ?」
『確か俺の代の生徒会の履歴に残ってるはずだから調べてみな』
「生徒会?」
『俺の時もメイド服とかは当然あったしな。借りれる所も記録してある』
「じゃあ資料が残ってれば借りれるかもってこと?」
『そうそう、それでダメだったらじいさんのとこから持ってくるわ』
「わかった、じゃあ家に帰ったら報告するね」
『あいよ。午後も授業頑張れよ』
「うん、冬夜くんもお仕事頑張ってね」
電話を切って私は1度教室に帰る。午後の授業は文化祭の準備しかしないのでそこで生徒会にいけばいいだろう。
先生に午後は生徒会に1度行くことを伝えて今度は3年の教室に向かう。
「すみません、
「はいはーい」
呼ぶとすぐに返事が帰ってきて私のところまで出てきてくれる。
「綾香ちゃんどしたのー?」
「ちょっと文化祭のことで生徒会に相談があって」
「ふむふむ、んじゃ生徒会室にいこうか」
「わかりました」
白石先輩はクラスの人に生徒会室に行くことや授業に遅れるかもなどのことを伝えてから歩きだす。
「それで突然生徒会に用事って?」
「実は……」
文化祭で喫茶店をやることと、それで服が必要なことを道すがら先輩に伝える。
「なるほどね、資料とかは残ってるはずだからそこを見ればいいもんね」
「はい」
「けどよくそんなこと思ったね。先生が言ってくれたの?」
「いえ、知り合いが聞いてみたらって」
「なるほど」
そう言っているうちにパソコンで過去の資料を開き私に見せてくれる。
「はい、私も内容は把握してないから頑張って探してね」
「大丈夫です」
私は迷わず冬夜が生徒会長だった時の資料を開く。結構長い読み込みを経て開いたファイルには膨大な量のデータが入っていた。
「え……?」
「うわ、なにこれ。すっごいね……」
「ものすごく事細かに記してありますね……」
「すごい丁寧な人だったのかな?」
「かもしれないですね」
と、想像してみる。けど資料を見るとどれがどこにあるかなど非常にわかりやすく示されていて量の多さなど全く気にならない。
「めちゃくちゃ見やすいね」
「そうですね……あっ、これかな」
文化祭の時の資料を見つける。そこから服などをどしたの資料を探す。
「へぇー、ここ貸してくれたりしたんだ」
「そうみたいですね」
その場所はいつも私たちが利用している喫茶店だった。なぜあるのかは知らないけど聞くだけ聞いてみようとメモをしておく。
「あれ……この時の生徒会長の名前……七草?」
「そうですね」
「1年にも七草くんいるよね」
「白石先輩がご執心の子ですよね」
「んんっ!?それはいまやめようか!ね!」
「からかっただけですよ?でそれがどうしたんです?」
私はあくまで知らない振りをしてこの場を凌ごうとする。
「確かお兄さんがいるって言ってたのよね。この学校を卒業したって言ってたし……」
「へぇー」
「って!綾香ちゃんこないだ春弥くんと一緒にいたよね!」
「ぎくっ」
「もしかしなくても知ってるでしょ!てか知り合いがこの時の生徒会長なんだよね!」
「ぎくぎくっ」
「……さーて洗いざらい吐いてもらおうかな?」
「……お手柔らかにお願いします」
いい獲物を見つけたと言わんばかりの顔をした白石先輩に私はこの後起こることを想像して震えるのだった。
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