デート 3
ソフトクリームを食べ終えてちょっと英気を養い俺たちは再度モール内を散策する。
「どこかいきたいところはあるか?」
「そうだなぁ……ゲーセンとかいってみたいかも」
「ゲーセン?いいけど……意外だな」
「そう?あそこぬいぐるみがたくさん取れるし楽しいよ」
「たくさんって言ってもそんなに取れないだろ」
「え?取れるよ?」
「え?取れるの?」
そんなこんなでゲーセンのクレームゲームのコーナー。俺はプレイ中の綾香の後ろに立ち観戦している感じだ。いま狙っているのは某有名RPGゲームのモンスターだ。8体集まって合体した状態の大きなぬいぐるみを狙っている。
「うーんと……」
綾香が巧みにアームを操り軽々とぬいぐるみを持ち上げる。そしてゆらゆらと運ばれてあっさりと獲得する。クレームゲームってこんなに簡単だっけ?
「すごいな……」
「ふふーん、これぐらいは慣れたものだよ」
綾香がドヤ顔をして景品を取る。あらかじめ用意していた袋にそいつを入れる。そして綾香は次の筐体を探すためにまたゲーセン内を歩く。大きなぬいぐるみは今のが1体目だが小さいのはすでに3体取っている。あんまり取ると晩御飯の時に持ち歩くのが大変そうだけど考えているのだろうか。
「綾香、一応聞くが帰りのことは考えているよな?」
「うん、ちゃんと持ち運べる程度にするから安心して」
「そっか、まぁある程度なら俺が持つから置く場所とか考えて取れよ」
「はーい!」
元気よく返事した綾香だが絶対取りすぎるな、と確信をして俺は綾香の後をついていった。
「……取りすぎちゃった」
「そんな気はしてた」
「うぅ……」
綾香の両手にはいっぱいになった袋があり今回の成果を物語っている。使用した金額が気になるが実際は一つ当たり300円とかなのでそんなには使っていない。それでもまぁまぁの金額は使っていると思うが。
「荷物は一回コインロッカーにおいてご飯を食べに行こうか」
「うん、ありがと」
「まぁ楽しくなったらそれだけやるのは仕方ないしな」
コインロッカーはここに来るまでにきた地下道にありモールを出るとすぐに見つかった。そこの一つに綾香がとった景品や今日買ったものを入れて荷物を軽くする。そしたら後はどこか食べるところを探すだけだ。
「食べたいもののリクエストとかある?」
「うーん……和食の気分かな」
「りょーかい」
「細かく言うと生姜焼きが食べたいです!」
「わかった、なら近いとこにいい店があるからそこにいこうか」
「うん」
2人でゆっくりと歩きだす。先ほどまでとは違い今は2人とも手が空いているので俺は綾香と手をつなぐ。綾香は一瞬びくっとしたもものすぐに返してくれて恋人つなぎをして歩く。
まだ恥ずかしさが消えないけど会話はまともに続くようになりようやく婚約者って関係だけではなく恋人として進めたような気がしてうれしくなった。
「ついたぞ」
「おぉー」
「そんな驚くようなとこか?」
「都会にある大衆食堂ってなんかよくない?」
「あーそれはわかるかも」
暖簾をくぐり店の中に入る。店員さんに案内されて俺たちは席に座る。お冷とメニュー表がすぐにきて俺はメニューを漁る。
「ゆっくり選んでいいよ」
「ん~~何が食べたいかなぁ」
結局いろいろみて俺は麻婆定食にした。今日は辛い物の気分だ、多分。
「すいませーん」
店員さんをよんでメニューを伝え注文を終える。
「あとで麻婆豆腐一口ちょうだい?」
「いいぞ、またあーんしてやろうか?」
「うっ……お、おねがいします……」
「してほしいのか」
「そりゃ恥ずかしいけど……してくれるならたくさんしてほしい」
「なるほどな、なら家で食べるときとかはたくさんしようか」
「うん!その時は私もするよ」
こんな感じで数分いちゃついていると注文した料理が運ばれてくる。ほぼ同時に両方運ばれてきたので俺たちは同時に食べ始める。
「「いただきます」」
まずは麻婆豆腐を口に入れ立て続けにご飯をかきこむ。麻婆豆腐の辛さを程よくご飯が中和してくれて最高のシナジーが生まれる。こういうのって無限に食べれる気がするよな。
ちらりと綾香の方をみると綾香も満足そうな顔で生姜焼きを食べているのでお気に召したようで一安心する。
2人とも半分程食べ進んだところでは俺は交換を申し出る。
「生姜焼き1口くれない?」
「いいよ〜」
そういって綾香は箸で上手に1口分に肉を取り分けてあーんをして食べさせてくれる。
「ん……うまいな」
「だよね、今度家でも作ってみようよ」
「だな、ほれ麻婆豆腐。ちょっと熱いぞ」
「ん……はふっ、んっ……この辛さが堪らないね〜」
「本格までは行かないけどいい辛さしてるよな」
お互いの料理を食べあって感想を言い合う。これは両方とも今度家で作りたくなるやつだな。麻婆豆腐はどうせなら本格的なやつを作ってみてもいいかもしれない。
その後はぽつぽつと会話をしながらもご飯を食べ続け約20分程で晩御飯は終わった。
「ん〜〜美味しかったぁ〜」
綾香がぐぅっと身体を伸ばしながらそういう。わかる、店を出た時とかなんかそういう動作をしたくなるよな。
「この後は帰るだけだけど買い忘れとかないよな?」
「うん、今日はもう大丈夫だよ」
「そっか、なら帰ろうか」
まずはロッカーに行き荷物を回収してそのまま駅に向かう。荷物が多い分ちょっとだけ時間がかかったが無事電車に乗ることができる。電車を降りて暫く歩くと喧騒が嘘のように消え静かな空間ができる。
「駅からちょっと離れただけなのに不思議だね」
「まぁこの辺に店とかはないしな」
「大きいマンションとかが多いもんね」
「夜静かな分に越したことはないだろ、ゆっくり寝れるし」
「そうだね、確かにこれぐらい静かな方が過ごしやすいかも」
「……今日は満足できたか?」
「うん、すっごく楽しかった」
「そりゃよかった」
綾香の笑顔をみてようやく一安心する。やはりそれを聞くまでは上手くいったか不安だったのだ。
「またデートしような」
「うん、たくさんいろんな所にいこうね」
「泊まりの旅行とかも行きたいよな」
「温泉旅館とかいいね」
「夏休みか冬休みぐらいにいくか」
「その時は一緒にお風呂入る?」
「………………綾香さえよければ入るよ」
「それじゃあ準備だけしとくね」
やっぱ綾香ってこういう駆け引きがうまいんだよな。たまにの反撃でしか勝てないのをいつかどうにかしたい。
家までの僅か数分を2人で楽しみながら歩く。お互いいろんなことを思っているだろうけど今日が楽しかったというものだけは共有できていると思い俺たちは帰路についたのだった。
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