41、壁に耳あり (3/3:耳の日)

「彼、地獄耳なの」

 友人が言った。小さなバーのカウンター。話の端に出た言葉だ。

 もともと耳がよかったらしい。それが付き合い出してから尋常ではなくなった。その場にいるはずがないのに、発言内容がすべて筒抜けになったのだという。

 もちろん盗聴を疑った。だが、どれだけ身の回りを調べても盗聴器は見つからない。

「別れたら?」

「そしたら、その後の生活をSNSで逐一曝露してやるって」

 私は顔をしかめた。そんなやつのどこに惹かれたのか。彼女が力なく笑う。

「きっかけは、手術」

 彼はその時の主治医で、不安がる彼女を朝に夕に励ましてくれたのだという。

「……何の病気だったの?」

「心臓の病気。ペースメーカーを植え込んでもらったの」

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