#58 幼馴染、再び



 期末テストが終わると、漆原さんは言ってた通りに放課後は空手道場へ行っているそうだ。


 月曜日と木曜日は生徒会があるから、火水金日の週4。

 その結果、生徒会のある日は僕と一緒に帰るが、それ以外の空手がある日は漆原さんは急いで一人で帰っていた。



 あと、毎日あった手作り弁当も、前日夜の下ごしらえが生徒会の日の月木しか出来ないということで、火曜日と金曜日は今まで通り作ってくれて、他の日は自分で用意した。 因みに、お昼時間を一緒に生徒会室で過ごすのは今も継続している。 最近では生徒会の他のメンバーもたまに来ては一緒に食事をするようになった。



 漆原さんは、忙しくしながらも生徒会の活動はキチンと取り組んでいて、むしろ以前よりも意欲的に頑張っている様に見えた。


 でも、僕との時間は以前に比べ減ってしまったし、やはり距離を感じる。


 手を繋いで歩くことも無くなったし、ハグを強請られることも無くなった。

 寂しい気持ちは正直あるけど、コレが本来の距離だったのだ、と思うようにしている。


 きっと、僕も漆原さんも急に仲良くなったものだから、この数か月は浮足立っていたんだろう。


 何にせよ、漆原さんには嫌われてはいない様だし、引き続き友達としては接してくれるので、僕もこの距離感で身の程を弁えるように心がけている。




 放課後は、漆原さんと過ごす時間が無くなった僕は、以前の様にドズルの散歩の時間を増やした。


 12月で寒くなっていたけど、ドズルはいつも元気で、小学校の校庭ではいつも走りまわってはしゃいでいる。


 僕の方は、漆原さんに教えて貰った空手の型を自主練習するようにしていた。


 ちょっと未練がましくはあるけど、いつか漆原さんに上達した僕の型を見て貰えたら、なんて考えてたり・・・





 ◇◆◇





 そんな日々を過ごしていた冬休み直前、学校から帰ると久しぶりにカスミに話しかけられた。



 自宅の門を入ろうとしたところで、不意に後ろから「イチロー!お願い待って!」と。


 振り向くと、制服姿のカスミが立っていた。

 なんだか悲しそうな表情だった。



 わん!

 グウゥゥゥゥ わん!


 カスミの声が聞こえたからか、ドズルが騒ぎ出した。


『ドズル!ハウス!』


 グウゥゥゥゥゥ!


 僕の言葉でもドズルが威嚇を止めてくれない。



『ちょっと待っててくれる? ドズル大人しくさせるから』


「わ、わかった」


 ドズルのところへ行き、抱き着いて『よしよし』と首や耳をワサワサしてやると、機嫌を直して僕の顔をペロペロし出した。


『口臭いよ!』



 カスミの方を見ると、門のところから不安そうにこちらを覗いていたので


『カスミも入っておいで、もう大丈夫だから』


「う、うん」



 カスミが庭に入ってくると


 うぅぅわん!


「ひぃ!」


『コラ!怖がらせちゃダメ!』




 

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