4章 比翼連理
#46 ヒメカの焦り
とうとう森山くんが生徒会の正式メンバーになってしまった。
しかも副会長。
喜ばしいことだけど、これで森山くんの才能や人柄が公になってしまう。
正直言って、複雑だ。
実際、会長が森山くんを説得している時だって、私は森山くんに引き受けて欲しいと思いつつも、森山くんが副会長になった後の事を考えると、手放しに喜べなかった。
森山くんの事を考えれば、当然良いこと。
助っ人という立場を超えたこれまでの大きな実績が認められたわけだし、会長が言っていた様に、学校内ではもう誰も森山くんを馬鹿にしたり、ぞんざいな扱いをする人は居なくなるだろう。
それに、自己評価の低かった森山くんも、認められたことが自信に繋げられるかもしれない。
ただ、本人は『こうやって社畜として飼いならされてしまうのか・・・ブラック生徒会恐るべし!』とか言ってたから、あまり期待は出来ないけど。
兎に角、私の我儘でこの先の森山くんの明るい学校生活を邪魔する訳にはいかない。
問題なのは、私の方。
只でさえ生徒会の中でも嫉妬で悶々としてたのに、これが学校全体になってしまったから、きっと私以外にも森山くんの良さに気づいてアプローチをかけてくる子も居るに違いない・・・
今まで、私一人で森山くんを独占出来ていたというアドバンテージがあったからこその今の関係だけど、これから私の様な森山くんに好意を寄せる子が増えれば、私なんて相手にされなくなってしまうかもしれない。
まずい。
非常にまずい。
『漆原さん、どうしました? 箸が止まっていますけど、調子でも悪いのですか? ま、まさか風邪でも引いてるのですか!? 熱はありますか!? 喉は痛くないですか!? 寒気は!? 咳は!? またお外で長時間精神統一でもしてたんですか!? こんな所でお弁当食べてる場合じゃない!保健室に行きましょう!』
「だ、大丈夫です! 風邪じゃありませんから!」
『そ、そうですか・・・でも調子が悪いようなら、無理をしないで下さい。 何せ現世の聖女様なのだから大切なお体です』
「心配してくれて、ありがとう。 でも本当に大丈夫ですから。 ちょっと考え事してて」
『なるほど。 ところで、今日のミニハンバーグは、漆原さんが? 以前ママさんのミニハンバーグを頂きましたが、ママさんのよりも更に上を行く美味しさですね。表面の焼き加減と中のジューシーさ、これはフライパンとオーブンの2度焼きですか? ミニサイズでも手を抜かないとは流石です。 素晴らしい』
「うふふ、ありがとう。ママのより美味しいって言われると、嬉しいですね」
『ええ、お世辞では無く本当に美味しいです。 漆原さんが洋食レストランを始めたら、きっとこの町のレストランは全て潰れてしまいますね』
「また大げさなんだから。うふふ」
『しかし本当に良いんですか?毎日お弁当作って頂いて。 毎朝大変ですよね? 無理しなくてもいいんですよ?』
「大丈夫です! 私が好きでやってることだから。 それにこうして毎日一緒に食べれるのは楽しいし、こうやって生徒会室で二人っきりっていうのもね?」
今ではお昼休憩にこうやって生徒会室でお弁当を食べる時間は、堂々と二人で過ごせる貴重な時間なのだ。
この時間の為だったら毎朝お弁当作ることなんて、全然大したことじゃない。
『ところで、もうすぐ期末テストですが、今回も勉強会をしますか?』
「そうですね。また是非やりましょう。 週末が楽しみですね」
『勉強が楽しみだなんて、漆原さんは根っからの勉強好きなんですね』
「ち、違いますよ! 森山くんと一緒だから楽しいんです!」
『そうなんですか? 勉強してるだけで僕は特に何もしてませんが』
「う~・・・」
鈍感なんだから!もう!
あ、でも勉強会か・・・
もしかしたらコレはチャンスかも。
後でハルコちゃんに相談しよう!
森山くんの唯一の友達としてのアドバンテージ
私の武器はコレしかなく、そしてその武器は足枷にもなっていると思う。
一心同体と互いを思う仲だけど、恋の仲は一向に進展していない。
女の恋は戦いだ。
この戦いに勝つべく、今まで以上に気合を入れなくては。
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