#45 埋もれ木に花が咲く
おかしい・・・
どうしてこうなった・・・
以前よりも居心地が悪くなってるんだけど
遡ること数日前
放課後、週に2回の生徒会活動のお手伝いの為に漆原さんと生徒会室に訪れていた。
因みに、僕が生徒会のお手伝いをしていることは周りに知られているため、今では堂々と漆原さんと一緒に廊下を歩ける。
で、生徒会室に入って早々、中山会長がみんなを集めてこう宣言した。
「急な話になるけど、3学期から副会長を2人制に増やすことになった。 これは僕と咲田くんと顧問の権田先生とで相談して正式に申請し、既に理事会側の承認も得ている。 それで、そのもう一人の副会長だが、森山くん、君にやってもらいたい」
「「「「ええええ!?」」」」
『はぁ?』
何を言い出してるんだ、会長は。
「君は期間限定の助っ人だから、2学期が終われば役目が終わる予定だった。 しかし、僕も咲田くんも君には残ってもらいたいと思ってるんだ。 そこで苦肉の策として、ポストを1つ増やした。 要するに君を正式な生徒会役員にする為に副会長を2人制にすることにしたんだ。 どうだい?やってくれるかい?」
『遠慮します』
「即答!?」
「も、森山くん!?」
むむ
漆原さんまで僕に副会長をやって欲しいのだろうか
「拒否する理由を教えてくれるかい?」
『はい。 この2か月弱、繁忙期ということで助っ人に来ましたが、業務の処理だけでなく、繁忙期でも少人数での効率的な運営が出来る様に新たなシステムの構築と改善に取り組んできました。 そしてそれは既に完成していると考えます。 つまり僕の役目は終わり、今後は助っ人を要請せずとも6人体制での運営が可能になったはずです。 ”功成り名遂げて身退くは天の道なり”と言います。老兵は黙して去るべきです』
「なるほど・・・じゃあ、別の理由があったらどうだい?」
『別の理由ですか?』
「そう。 君はクラスでなんて呼ばれている?」
『モブ山とか、陰キャぼっちとか、サイバイマンとか、石ころとか、あれ?居たの?とか、あとは・・・』
「もういいよ! 聞いてると居た堪れなくて胃が痛くなるよ!」
『はぁ』
「で、そんな君がもし生徒会副会長になったらどうなると思う?」
『魔女裁判か僕を滅する
「ちがうだろう! 誰も君のことをモブ山だなんて呼ばなくなるんだろう!」
『いえ、世の中そんなに甘くはないです。 会長も所詮エリートのリア充。 僕の様な日陰ぼっちの境遇など理解出来ていないのでしょう』
「森山くん、生徒会会長である僕や副会長の咲田くん、そしてこの生徒会のみんなを少し舐めていないかい? 君が副会長ということは、僕たちがバックに居るということだよ? ここにいる6名は君に並々ならぬ敬意と恩義を感じているんだ。 君に何かあれば僕たちは全力で君を守ると約束するよ」
『はぁ』
「で、どうだい?やってみる気になったかい?」
『ならないです』
「また即答!?これだけ話しても!?」
「ちょっと待ってください会長!」
「ふむ、漆原さんからも何かあるのかい?」
「えっと、森山くんはとても頑固で理屈っぽいんです。一度こうと決めたら簡単には考えを変えません。 だからここは検討する猶予を設けたらどうでしょうか」
むむ
今まで漆原さんからのお願い(我儘)沢山聞いて来たのに! 本人前にして容赦ない!?
「なるほど、その方が森山くんも前向きに考えてくれるかもしれないね」
「はい、森山くんもそれでいい?」
『ぐぬぬぬ、どうせ断るのに時間をかけても問題を先送りにするだけだと思うのですが』
「森山くんお願い! 私の顔を立てると思って! あ、そうだ! 前向きに検討してくれるのなら毎日お昼のお弁当作ってあげるから!」
『はい、了解しました』
「今度はあっさり了承!? 弁当に釣られたか!」
この時、これまで黙っていた咲田先輩が口を開いた。
「現副会長の私から森山くんに1つ良いことを教えてあげる。 副会長になったら、お昼休憩に生徒会室を使ってもいいわよ。 今、非常階段でぼっち飯なんでしょ? ここなら温かいし人目を気にせずゆっくりとお弁当食べられるわよ?」
『あ、はい、じゃあ副会長やります』
この季節、非常階段は寒かったんだよね
「「「「「ええええええ!?」」」」」
「意外とチョロかったぞ!?」
こうしてイチローは、生徒会副会長に大抜擢された。
しかも学園創立以来初めての選挙なしでの現役生徒会指名によって。
そして、生徒会により副会長2人制になることと新な副会長にイチローが任命されたことが告示されると、イチローのクラスでは
「モブ山く~ん、生徒会副会長になるんだって? じゃあこれからはモブ山副会長って呼ばなくちゃいけないなぁ」
全然呼び方変わってないよ会長!
むしろ以前よりイジられるようになってるよ!
やっぱり僕が言ってた通りじゃないか!
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