#44 ヒメカの嫉妬心


 森山くんが生徒会の助っ人に来てから、早1か月。 

 森山くんが今まで隠していた才能の片鱗を生徒会で見せてから、生徒会メンバーからの評価がガラっと変わり、今では生徒会の中心的な役割を担っている。


 元々は会計役である私の補助として参加して貰ったのに、会長や副会長からも手伝い要請がかかって、数多くの成果を残しているのだ。


 各部活動の部室割り当ての見直しと使用規約の作成

 各委員会の活動状況の”見える化”と怠慢の目立つ委員会へのペナルティに関する規定の作成

 備品倉庫の棚卸とリスト作成と不要品処分の許可申請

 体育祭の係員の配置案とシフト表の作成

 昼食時の校内販売での価格見直しと品揃え刷新を目的とした業者変更の提案書作成と新な業者候補のピックアップ

 文化祭での警備と案内係の配置案とシフト表の作成

 学校近辺の美化活動の提案書の作成

 年間行事のスケジュール見直し案の作成

 etc


 これ全部を森山くんは一人で片づけた。

 そして学校側の審査では全て一発承認されているから、また凄い。


 確かに課題の提示や問題提議は会長や副会長、職員からだけど、中身は全部森山くんが考えて作り上げているので、森山くん一人でちょっとした学園改革をやってしまったようなものだ。


 会長や副会長が「これ出来る?」って森山くんに相談すると、『少しお時間下さい』って言って、30分とか1時間で作っちゃうの。

 それで出来上がった物が、どれもコスト低減や時間短縮出来る内容に作り込まれてるから、即採用。

 それでみんな調子に乗って次々と森山くんに依頼して、結局森山くんが一人で全部片づけちゃう。


 最初の頃は「流石森山くん凄い!漸くみんなにも森山くんの凄さを分かって貰えた!」って私も嬉しかったけど、最近は心中穏やかじゃない。


 私だって色々相談したりお手伝いお願いしたりしたいのに、最初の頃に予算関係の業務を効率化したシステムを森山くんが作り上げちゃったから、今では私一人でも時間余っちゃうくらいで、森山くんほとんど私の隣に居てくれない。



 二人で過ごす時間を増やすのが目的だったのに、いつの間にか他の生徒会メンバー達に森山くんが横取りされてしまった。

 注)イチロー助っ人の本来の目的は、繁忙期の生徒会のお手伝いです。



 それで、咲田先輩や書記の平井さん(♀)が森山くんと楽しそうに会話してるの見てると、心がザワつく。 最近じゃ、中山さんや工藤くんが森山くんと楽しそうに話してるの見てても、イライラと。


 殻に閉じこもって一人ぼっちだった森山くんが、ようやく壁を作らず周りを受け入れるようになって、更に周りが森山くんの凄さに気づいた。

 この状況なら森山くんだってきっと徐々に自信を取り戻していくはずで、本当だったら喜ぶべき状況。


 なのに

 う~~森山くんは私が連れて来たのに!

 私だって森山くんと一緒に仕事したいのに!

 森山くんは私の隣に座ってなくちゃダメなの!ってなっちゃうの。



 だけど、本当は自分でも分かってる。

 酷く醜い嫉妬だって。


 でも、どれだけ精神統一しても、醜い嫉妬が消えてくれないの。

 毎朝、冷たいシャワー浴びてから30分は正座して気持ちを静めてるのに、学校に行って森山くん見ると、私だけを見て欲しいって思っちゃうの。


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