凱旋とお風呂

幸手原の合戦より4日後、江戸城へ帰って来た。

俺としては得る物の多かった合戦だった為、大満足でホクホク顔での凱旋だ。


今回の合戦で得た物は古河公方こと足利成氏の兵達が壊走した際に打ち捨てた武具、討ち取った兵達の武具、そして何よりも成氏軍20000人の腹を満たす為に運び込んでいた兵糧や金が手に入った。

成氏は恐らく幸手で勝利を収めた後、周辺を切り取り所領とするつもりだったようで、兵糧も500石程持って来ていたが、秋の刈り入れ後、周辺の農家から米などを買い取るつもりだったようで、2000貫文の金を持って来ており、それに加え仕立ての良い衣服等を残していった為、本来なら味方の死傷者の家族へ渡す金が嵩み赤字になる所、今回は死傷者が少なかったこともあり、豊嶋、太田、成田の3家で分けても十分な利益となった。

まあ手柄を挙げた者、合戦に参加した者に褒美を出すので結果マイナスになるのだが、それでも出費は戦利品でほぼ賄える。

因みに折れた刀や摩耗が激しい槍の穂先など価値の無いものは豊嶋家が別口で引き取った。


武具に関しては折れた刀や槍などもあるが、折れた刀や摩耗が激しい槍の穂先、質の悪い刀や槍などは鍛冶場に運び農機具に生まれ変わり、状態の良い槍の穂先は柄を新しくして再利用する。

状態の良い刀、鎧甲冑、衣服などの状態の良いものは若干手入れをし、豊嶋家の者に格安販売し、足軽などが付けていた胴丸などは商人に売り払う。


9000人以上を討ち取った為、武具など膨大な数となり、俺が江戸城に凱旋した翌日には既に城下に商人が多く集まり始めている。

江戸城へ入城した後、内政担当の白子朝信を呼び、戦利品である武具を留守居の者達に仕分けするよう依頼し、鍛冶場への輸送、商人への販売、豊嶋家家臣などへの販売を任せる。


今回の合戦に参加した者への褒美は一律で500文、それとは別に名のある者の兜首は5~10貫文に加えカレールーと背負えるキャリーバッグ、名の分からぬ兜首は3貫文とカレールーを与える。

実のところ、兜首を一番多く挙げたのは太田家でその次が成田家、そして豊嶋家は意外と少なかったが、これは配置の関係で左右を抑えていた太田、成田軍の追撃が早かったからだ。

というか豊嶋軍は自ら設置した馬防柵の影響で追撃が遅れてしまった。


因みに褒美のカレールーと背負えるキャリーバッグは、結構在庫がダブついているんだよね。

転生してからかなりの時が経ったし、毎日カレーを食べるって訳にもいかないので、段々消費量が少なくなり、背負えるキャリーバッグ等と共に在庫過多になっている。

そして以前、専業兵士の晩飯に、何回かカレーを振舞ったら大好評で、後に褒美として貰いたい物を聞いた時、所領や金に続いてカレーとの声があったのだ。

カレールーの賞味期限は2022年3月と書いてあるから、多分後500年は大丈夫なはず…、と信じる。

というかこの時代の人の胃腸の強さを信じる!!


そして合戦に参加した兵達に大盤振る舞いをしてもあまり懐が痛まない理由、それは豊嶋軍が専業兵士で江戸城の城下近くの長屋に住んでおり、城下に建てた豊嶋家直営の娼館、飯屋、酒場が複数あり、金を得た兵達の多くはそこに金を落とすので、最終的に半分ぐらいは俺の元に戻って来るからだ。


尚、豊嶋家直営の娼館で働く女の子の待遇はこの時代では超好待遇だったりする。

衣食住が保障され売上の3割は女の子の手取りとなる。

奴隷として売られて来た女の子でも同様に給金を渡しているので、売られた価格の2倍を払えば自由の身になるうえ、実は売上の5分が退職積立金として自動的に貯蓄されている。

基本的に娼館は昼間も営業しているが、昼間は自由勤務で客を取らず遊んでいても良いし、客を取っても良い。

そして本人が希望しない限りは3日に1日休みを設けているし、勤務形態を自分で決められるので6日働いて2日休みにしても良いうえ、奴隷で無ければ出勤日は自由に決められる。

現代の感覚ではホワイトとは言い難いが、この時代ではかなりのホワイトだ。

おかげで条件を聞きつけた遊女が関東の各地から集まって来ている事もあり、今では400人近くの遊女が働いている。

と言うか人が増えすぎたため、奴隷として買い取った女の子は最近、豊嶋家直営の酒場だけでなく、製紙場や製糸場、機織り場や仕立て屋で働いて貰っているぐらいだ…。


俺としては特殊浴場を作りたいんだが、膨大な量のお湯が必要になるし、ローションもどきを作るだけにも小麦粉や片栗粉が大量に必要となるので、現在構想だけで実現には至っていない。

絶対に人気が出ると思うんだけどな…。


お湯を沸かすのにも金がかかるし、肌に害のないヌルヌルを大量生産するのも大変だし。

東京で温泉が出たってニュースで見たけど、ネットで調べたら1500メートル掘ってやっと温泉が出たとの事だったので、温泉はこの時代では現実的ではない。

と言うか1500メートルも掘る技術も道具も無い。

温泉が出る場所が所領になったら、温泉を利用した特殊浴場を作ってやる!!

そう心に決めながら、江戸城に作った浴場で照と彩と共に湯に浸かっている。


うん、2人とも発育途中だけど、照は白い柔肌でスレンダーながら膨らむところは膨らみだしてるし、彩は引き締まったアスリートのような身体に形の良い膨らみが…。

ブラジャーもどきを作らせて使わせている効果が出ているのかな。

2人とも垂れることなく成長している。


この時代ってふっくらしたほうが美人って言うけど、現代人だった俺の感覚だとポッチャリ系よりスレンダーが良い。

手を出すにはまだ照は若すぎるし、かといって16歳の彩だけ手を出すと不公平が生じるし…。


「殿はいつも胸ばかり見てまする」

「あ~、確かに。でもほととか尻とかも良く見てるな~。この前仕立ててくれた珍しい着物の時は足をずっと見てたし、照が16にならなくても夜伽の相手は出来るんだけどな~」


湯船の水面に見え隠れする膨らみを眺めてたら、照と彩に突っ込まれた…。

「いや、子供を産むとなると身体に負担がかかるからね。 最低でも16歳になってからじゃないと。 何かあってからじゃ遅いし」


「殿がそうおっしゃって身体を労わってくれるのは嬉しゅうございますが、照は嫁いでもう10年になりまする」

「まあ嫁いで来た時は4歳だったからね…。 って大切な事言うの忘れてた!!」


「何をお忘れだったのですか?」

「あ~、これは絶対に女子絡みだね…。 父上が母上の侍女とかに手を出して側室にした時のような顔だし」


照は4歳から豊嶋家に居るからこういう事に疎いんだろうけど、彩は流石、三浦時高の娘、鋭い…。

「実は成田正等殿のご息女を娶る事になった…ん、だけ、ど…」


不倫がバレた夫の気持ち? いや浮気がバレた男の気持ち?

どっちも似たようなもんだが、まさか転生して味わうとは思わなかった…。


「それで?」

「それで? いや、娶る事になりました。 正妻として他の正妻と上下関係は作らず同等の地位という条件で…」


絶対に不機嫌になるか怒るかと思っていたが、普通に受け入れている。

「殿は豊嶋家の当主であり武蔵守護代です。 妻が2人では少ないぐらいです」

「まあそうだな~。母上の話では太郎が産まれる前なんか8人ぐらい側室が居たって言うし、良いんじゃない? 成田家って豊嶋家と三浦と同じで名門でしょ? むしろ私みたいな出戻りじゃないのに、上下関係は作らず等々の地位でなんて条件でも良いなんて、それでも婚姻関係を結びたいって言うんだから」


う~ん、怒る、受け入れると言うよりも、なんかどうでもいいといった感じな気がして来た…。

なんか戦国時代は多妻だけど、鬼妻みたいな人が居て、夫が手を出した女の子を折檻したり殺したりとか本で読んだりしたから、修羅場になると思ったけど大丈夫なようだ…。


「殿、それで成田様のご息女のお歳はお幾つなのですか? 出来ればお名前もお教えくださいませ」

「歳と名前…、聞いてない! 以前から話はあったんだけど断ってて、今回援軍を出す条件に婚姻を承諾するって言ったから…」


照と彩が呆れている。

ですよね~。

多分、最初の頃に来ていた書状に詳細なんか書いていたんだろうけど、断る気満々だったから真面目に読んで無かったし…。


うん、誰か家臣を婚姻の打ち合わせという名目で忍城に行かせよう。

それで名前と年齢が分かるはずだ。


まさか幼女じゃないよな…。

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