ヤンデレ姫「魔物には感謝しかありません」

//勇者がドアをノック


//ドアの向こうから

入っていらして?


//ドア開け


まぁ! 勇者様!


そのお顔……みなまで言わずとも分かりますわ


やっと……長年の夢だったあれが、遂に完成しましたのね!


ぇ、えぇ! 魔物どもを一切寄せ付けない、鉄壁の魔法陣!


集まりに集まって、歴史上最大の数十万の民と、この土地を覆いつくすほどの魔法陣を完成させるなんて……流石は勇者様! 普通に考えていた期間よりもずっと短く、完璧ですわ!


あなたが魔王を倒し数年……長かったようで、短かったですわね……


あら、ふらついて……ごめんなさい、魔法陣を完成させるためとはいえ、人とは違う魔力を持ったあなたの血を所々で流させることになってしまって……後で、ゆっくり治癒、いたしますから……


//駆け寄り


//囁き

ありがとうございますっ、勇者様っ♪


あらあら、赤くなってしまって……そこは人とは変わらない、可愛い部分も勇者様にもあるんですねっ、うふふっ


でも、長かった……周囲の説得もままならず、勇者様という協力者を見つけるのにも時間がかかってしまった……


勇者様のおかげで、計画は滞りなく……


魔物の性質、性格、他の様々なことを学びつくし、やっと考え付いたこの……この……


……クスッ♪


それでは勇者様、取引といきませんか?


あなたが作っていた魔法陣……あれは国民を守るモノではなく……


//半笑い

それどころか、数十万人の命ぜぇぇんぶ奪っちゃう、呪いの魔法陣です♪


凄いでしょう……? 魔王城の書物からアイデアはいただいてきました♪


しかも使用者が全部魔力を吸い上げて、魔王みたいにもなれるようなんです


//残念そうに

詳細な記録はぼかされていましたが、勇者様が倒した魔王は精々数万人程度だそうです……


私は少なく見積もってもその十倍……


//囁き、挑発するように

勇者様、私に勝てますか?


そんなことは絶対させない……?


あらあら、勇者様ともあろう方が、なんて自分勝手なのか……んふふっ♪


//舌なめずりするように

そう言われましたら、ますます強引に、無茶苦茶にして奪って差し上げたい……♡


//わざとらしく

とはいえ、むやみな殺生は私も好みません♪


ですから、取引として……勇者様、私と添い遂げてください♪


ずっとこの部屋にいて、誰とも喋らず誰とも顔を合わせず、


//ジャラ、と鎖の音

この、魔力も筋力も勇者の加護もぜぇんぶ無くしちゃう鎖を付けて、


ただただここで朽ち果てるまで、私とずぅーっと一緒に……ね♪


そうすれば、この国は勇者様の願い通り、このまま繁栄し続けるでしょう……


ただ、あなたがお仲間と……幼馴染様でしたっけ? その方々と一生離れていてくれれば。


もしくはそれがお望みでないなら……


//囁き

私と、魔王戦をもう一度しましょっか♪


まぁ、こちらは数十万の命……それと、あなたのお仲間と幼馴染様とは永遠のお別れですけどね♪


私はあなたを殺した後……えぇ、別にあなたがどうなっても構いませんのよ? どうせ蘇生できますし


私はどちらでも構いませんが……あなたなら――


//甘く囁き

勇者様なら、答えはもう決まっているのではなくって?


//囁き

ほら、私のモノになるなら、自分で鎖を付けて?


//鎖を付ける


//抱きしめ

んっ……んふふっ♪ 堕ちた♪ 勇者様が私の手の中に、堕ちましたわ♪


これでっ、勇者様が、あの愛しの勇者様が私のモノに……うふふっ、ふふふふふふふふっ♡


ねっ、ねっ、最初はどんなこと、しましょっか?


//悔しそうに

私、勇者様がいなくて寂しくて悲しくって、だけどあなたは仲間がいて国民に愛されて、神にまで祝福されてっ、私と大違いで絶望してましたの……


//恨み

あの小娘、あの腰巾着、後ろで見守るだけの国民ども……


私を差し置いて勇者様と馴れ馴れしくして……


//低音囁き

それにあなたも……私抜きで幸せになれるなんて思わないことです……


ですからっ


一緒にっ、一つになりたいわっ♡


ほらっ、この本を見て?


魔物の中には人間を捕食して自分の子どもにして産みなおしたり、血を与えて同族にしたり眷属にしたり……これなら私にもなんとかできそうだって思いましたの♪


あなたは、どれがいい?


私の子どもになりたい? これまでの旅は大変で苦しかったでしょうから、ママがいっぱい甘やかしてあげる♪


それとも、私のお兄様? 弟? どちらでも、同じ血が流れているなんて素敵……♡


お兄様なら、妹として慕い続け……弟なら、姉としてしっかり導いて差し上げます♪


んふふふふふふふふっ♪ 素敵……♪


こんな知識を与えてくださった魔物には感謝しかありませんわ♪


//囁き

さ、まずはどれがいいですか、勇者様♡

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る