第2章 Slaughter Shark Show ~サメの虐殺ショー~
第29話 Monkey Philia ―生徒会長―
ロサンゼルスの戦いから数日。俺は矢倍高校にいた。
主に額なのと、顔の上半分くらいをXみたいな形に巻かれているので、飯が食えるのが幸いか。
後、自分の歯によってズタズタになった頬に、虎みたいな傷が残った。本当に虎鮫になった気分だ。
……自分語りはいいんだ、重要なことじゃない。
問題は、あの地球防衛軍(民間)に全面的支援を受けている、この矢倍高校だ。
「おいっ、理科室に機材運んでくれ」
「食料の買い付けは――」
「ホームセンターにあるものは全部買ってこいと――」
「あのう、校門――」
何やら、学校全体が慌ただしい雰囲気だ。あちこちで生徒達が走り回っている。
怪しい機械を持った者、大量の荷物を運ぶ者、指示を出す者……前もやってたなこれ……
「サメ先輩、少しよろしいでしょうか?」
「えっ」
いきなり背後から話しかけられたので、後ろを振り向く。
そこにいたのは、妙に無表情な生徒だった。
「な、何かな?」
「矢倍高校における今後の活動に関しまして、生徒会長からお話があるとのことです」
今後……魔怪獣をしばきながら授業を受ける、じゃあダメなのか。いや、考えたらこれ結構なハードワークだな。サメじゃなかったら死んでた。
そういえばロサンゼルスの戦いでサメ率100パーセントになってたな。俺もサメの仲間入りだぁ~
「猿……会長から?」
つい口を滑らせてしまった。
何故、会長が猿なのか。それは、合えば分かる。
「ええ。詳細は自分で話すらしいので、行けば分かるかと。では」
生徒は、去って行った。
俺も生徒会室に向かうことにした。
◇
「来ましたね、さあさあこちらへ」
「はい」
彼女が、矢倍高校2年生にして生徒会長、
見た目はブレザーに黒髪ロングな美少女という、創作において模範的な
「それで、話って?」
「まぁまぁ、そう焦らずに。ゆっくりしていってくださいよ。どうせ、この後も暇なんでしょう?」
「そうだけど……あ、お茶ありがとう……美味しい!」
物腰は丁寧で柔らか。その上、気も利く。
一見、完璧で清楚な生徒会長と思われるかもしれない。しかし、彼女には、このご時世欠点とまでは呼ばないが、ヤバい部分があった。
……何だか、会長がソワソワしているので、少し話題を振ってみることにした。これで、そのヤバい部分が明らかになる。
「……良い絵っスね」
「そうでしょうそうでしょう!? いやぁ、美術部の子達が寝る間も惜しんで描いてくれまして――」
心底、嬉しそうに語る会長の後ろには、怯えたニホンザルの絵画が飾られていた。
2匹で抱き合って何かに恐怖するその姿からは臨場感と、この場にいないはずの
だが、今回に限って、その
「ほら、素敵でしょう? この雪に濡れた毛並み。このつぶらな瞳が、私を見つめているじゃありませんか。そう、あれは寒い雪の日の朝、山奥の温泉での出来事でした。気持ちよく温泉に浸かってる時、突然素っ裸の人間が入り込んできたんですからその時の驚愕といったら
この通り、彼女は異常猿愛者なのである。
絵の中の猿が怯えていたのは、彼女に対してだったのだ。
故に、彼女は親しみをこめて『猿』や『猿会長』と呼ばれている。曲がりなりにも女子につける
「あ、あの猿会長。話とは?」
「ああ、そうだった。その話だけど、何か最近物騒でしょ? だからこれ渡しとこうかと思って」
そいう言って、猿会長は机の上に無造作に置いたのは、ワッペンか何かだった。
ちょうど、俺の私服である青い上着に合う色と模様だ。
「……?」
「そして、これ」
猿会長は、ラミネート加工のされた免許っぽいものを取り出した。
俺の顔写真が……免許か? ワッペンは説明無しか?
「何これ?」
「それはキリング・ライセンス、殺人許可証です。暴力行為、殺人、いかなる武器の携帯、使用も許可されるなどなど。その他にもたくさん書かれています」
「は?」
冗談だろ、政府が発行したのか? 日本政府が?
ふざけんなこんなもん作ってみろ、法治国家の名が泣くぞ。
「シャークウェポンのパイロットであるあなたを、万が一にも失うことはあってはならない、というのが政府の意志ですから、何も問題ないですよ。本間博士に渡されました。君に渡してくれってね」
「嘘だろ……」
狂人に殺人許可証とか渡すなよ……というか、政府とズブズブじゃないか。
あの民間地球防衛軍だって、勝手にやってるだけだと思ったが、政府から委託とかされてる?
それとも、許可か何かを無理矢理もぎ取ったのだろうか。
「さっきも言いましたが、最近は物騒です。ヤバい、と思ったら遠慮せずに殺って大丈夫です。特に人間じゃない奴は、襲ってきたらできるだけ殺してください」
「人間じゃない奴……?」
「そう。でも襲って来なかったら放置でいいよ」
いつぞやに見た、怪人やら妖怪だろうか。
これ絶対巻き込まれるパターンじゃん。何で皆して
「で、このワッペンは……?」
「これは量子格納システム。今風に言えば、アイテムボックスかな?」
「何その超技術!?」
俺は試しに、手元のコップを収納してみる。
すると、コップはワッペンに吸い込まれるようにして消えた。
何だこの超技術!?
「あ、言っとくけど、それはマジの試作品らしくて、どんな大きさの物であろうと1だけしか仕舞えない上、人間以下の大きさじゃないと入らないらしいよ」
まあ、そうだろうな。
こんなオーバー・テクノロジー、何かの制約でも無いとおかしいわ。
しかし、身を護るためにこんなもの渡されても、正直困る。何をしまっておこうか……凶器?
まあ……メタルコバンザメ君もいるし、大丈夫か……?
「あー、もう1つ聞きたいんだけど」
「どうかしました?」
「皆、忙しそうにしてるけど、何かあるの?」
「……素晴らしいことだよ」
会長からはそれ以上、何も聞くことができなかったので、俺は生徒会室を後にした。
誰も彼も、世界観に関わる凄く重要そうな情報を、小出しにしないでほしいな……当事者からの感想だけど。
本当に、小出しにされる側からしたらたまったものじゃない。何せ、知りたいことが一切知れないのだから。
まあ、正直な所、小難しいことは抜きにして、ロボットバトルできればそれでいいか。
策略とか面倒なのは、頭の良い人達に全部丸投げしてしまおう!
――――――――――
【
・超超超危険人物。
矢倍高校の怪物と呼ばれ、様々な事件の黒幕だとか、人間じゃないとか言われている。
猿が大好きで、猿のマスクを被っている時がある。
戦闘スタイルは、相手の攻撃をクソキモい動きで避けたり、技を真似たりすること。
猿と○。○○をした。
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