第20話 飛ばせ!!! 波動衝撃波ダブルロケットパンチ!!!


 「はっ、手しか使えないとでも思ったかしら! シャークウェポン蹴りも得意なのよ!」

 『ギャオオォォ!!!』

 「チィッ! 学習したのかしら、回避するとは……!」


 首筋を狙った回し蹴りは、バックステップで避けられた。

 恐らく、先程ボコボコにされたのが身に染みたのだろう。


 『ゴコォォォォ……!!!』

 「うわっ!! 結晶……ブレス!!! 前が見えねェ……こともねぇ!!!」

 『ゴガッ!?』


 水晶らしき結晶の混じったブレスをフロントガラスに吐かれたが、水晶は透明なので、あまり問題はなかった。

 そのまま、右手で殴り飛ばす。おまけとして、腕部分からジョーズミサイルを1発だけ至近距離で爆発させてやった。ダメージを与えられ、なおかつ爆風でへばりついた水晶を取ることができた。


 「やるじゃないアンタ」

 「ありがとう。しっかし、あの透明の衝撃波出す奴どうにかならんかな」

 「踏ん張ったら耐えられることは分かったけど」

 『ギャオオオオ!!!』

 「邪魔よ!!!」

 『ギャッ!?』


 煙の中から出てきた巨大水晶トカゲを、見ずに裏拳で殴り飛ばすアルルカン。

 相変わらずの達人技だ、本当にやる奴なのは彼女の方だろう。


 『ゲェ!?』


 なおも向かってくる、巨大水晶トカゲ。

 だが、それは飛んできた槍によって阻まれた。アンドロマリウスの仕業である。

 今までどこで何をしていたのだろうか。


 『先輩方! 小せぇ奴らは全滅させた! 後はこのデケぇ奴と透明の奴だけだ!!!』

 『マジか!』

 『大マジッス! コイツは俺に任せて、透明の奴を叩きに行ってくれ!!!』

 『助かる!』


 巨大水晶トカゲは、キズナが引きつけてくれるようだ。ならば、俺達はあの透明の奴……『空間』を相手にした方が効率的だ。

 しかし、あれは衝撃波を放ち、こちらを邪魔してくるだろう。


 「ミサイルとかじゃ、撃ち落されそうだな」

 「そうね、シャークウェポンが飛ぶ威力だもの」

 「……一回、近づいて見るか?」

 「できるのかしら? だったらいいと思うけど」

 「まあ、やるだけやってみるわ」


 俺は、シャークウェポンを走らせ、揺れる『空間』に近づこうとする。

 勿論、衝撃波に邪魔されるが、俺はシャークウェポンが少し浮いた瞬間に、背中のロケットブースターを全開にすることで前に進むことに成功した。


 「なるほど、ロケットで推進力を得たのね」

 「こういうの、お前の方が思いつきそうなんだが」

 「生憎と、アタシはアンタ程この機体シャークウェポンのことを知ってるわけじゃないの。訓練時間はアンタの方が圧倒的に上なくらいだから」

 「んー、まあ、シャークウェポンでの攻撃方法とか、武装の組み合わせとか、色々考えてるからな」

 「……アンタ、四六時中サメのことばっか考えてんのかしら」

 「否定はできないのが辛いな」


 別に、俺だってそこまで真面目に訓練をしている訳ではない。

 飽きたらやめる、くらいの感覚だ。それほどまでに、シャークウェポンの操作は簡単なのだ。

 巨大生物との命のやり取りの中でも、搭乗者にまるで危機感を抱かせないくらいには。


 だが、その付け焼刃じみた訓練の成果だろうか、衝撃波という向かい風の中でも、安定した操縦をすることができた。流石に衝撃波のせいで、太平洋に行った時よりもはるかに遅いスピードだったが、『空間』はもう目前だ。


 「このまま体当たりだ!」

 「さぁて、どうなるのかしらね?」


 揺れる『空間』に突っ込むシャークウェポン。

 この攻撃が効くにしても、効かないにしても、何らかのアクションがあるはずだ。


 「……?」

 「え? 何?」


 シャークウェポンが接触すると、『空間』が横にズレた。

 まるで、押し出されるように、スーッと横にズレたのだ。


 「……一応、移動はできるのね」

 「動かせるのか……」


 だから何だという話なのだが。


 「至近距離からミサイルでも……」

 「舞った瓦礫があれに触れた瞬間、粉砕されたのを見たから、効果ないと思うわよ」

 「マジか。シャークウェポンは無事なんだなぁ……どうするか……」

 「あ、水晶柱が増えた」

 「またかよ! キズナはどうなってる」


 キズナの方を見ると、巨大水晶トカゲが3匹に増えていた。

 今はキズナの技量で対応できているが、これ以上増えたら不味いだろう。


 「何か無いか……あ!」

 「何か思いついたの?」

 「あれは移動できるんだよな? それでいて、シャークウェポンなら傷つくことはない」

 「そうね。それがどうかしたの?」

 「奴を手を包み込んでしまえばいいんだよ!」

 「! なるほどね!!!」


 もう一度ロケットブースターで飛行し、アルルカンとタイミングを合わせて、『空間』を両手で包み込んだ。脱出する隙間などないほどに閉じられているので、逃亡の心配はない。


 「ぐっ! 衝撃波が強くなってる! これ物体貫通すんのか!?」

 「シャークウェポンの硬い装甲のせいで、反響した衝撃波が内部で増幅されてるんだわ!」


 そんなゆで理論みたいなのありか?

 まあいいや。この際、衝撃波はデカい方が都合がいいからだ。


 「そりゃあ好都合!」

 「はぁ? 何が……」

 「まあ見てなって!」


 そういうと俺は、『ロケットパンチ』と書かれたボタンを叩き込んだ。

 衝撃波を出す『空間』と両手での『ロケットパンチ』の合わせ技。これこそ名付けて――


 「波動衝撃波ダブルロケットパンチ!!!」

 「名前ダッサ!!!」

 「言ってろ!!!」


 勢いよく飛んで行った両腕から、破壊の嵐が巻き起こる。

 空中を縦横無尽に飛び回り、水晶柱を打ち砕き、根本を粉砕した。


 『ギャアアアア!?』

 『グゲアアアア!?』

 『ゲ、ガギャァァァァ……』

 『はっはぁ!!! 派手なことすんなぁ、先輩!!!』


 巨大水晶トカゲを盾にした後、高速で離脱したおかげで、アンドロマリウスは全くの無事だった。特に傷ついた様子もない。

 爆笑するキズナのにそばでは、盾にされた哀れな3匹の巨大水晶トカゲが瞬く間に水晶の破片と化した。


 水晶柱を一通り破壊した後、俺は衝撃波が出なくなっていることに気づいた。


 「あれ、消えた」

 「多分、消滅したのよ。力を使い過ぎたのね」

 「分かるのか?」

 「勘よ」


 本当に消滅したかどうかは、本間博士から連絡がくるだろう。

 それまでは待っていよう。と思ったら、何もしてないのにシャークウェポンが動いたので、赤いレバーを引いた。これで一安心。


 計器を確認すると、サメ率は66.41パーセントになっていた。20パーセントくらい一気に増えたらしい。

 これ、アルルカンが倒した分もサメ率に加算されるっぽいな。何か不公平だ。




 ――――――――――




 【レプリスタル】体型:四足歩行 身長:6~45メートル 分類:鉱物生命体

 ・全身がクリスタルでできたトカゲ。

 トカゲにしては腕も脚も長く、尻尾が無いので、人間のようにも見える。しかし、分類はゴーレムと生物の中間生命である、鉱物生命体。

 通常は地下空間に生息しているため、視力はほとんどないが、代わりに聴力が発達している。

 魔法によって足元に巨大な水晶の柱を立て、縦横無尽に飛び交うための、自分に有利なフィールドを作り出す。しかも、クリスタルが保護色となるので、そこが厄介な部分である。

 水晶柱は、高濃度の魔力を持っており、魔法の触媒やマジックアイテムなどの作成には最適。一度に大量に採掘できるのも魅力である。ただし、水晶柱が立ち過ぎると、周囲の魔力が枯渇することがあるので注意。

 『生物なのでちゃんと繁殖するぞ』

 『あの水晶柱は、彼らにとっての卵みたいなものですね』


 【ハドー】体型:不定形 身長:可変 分類:エネルギー生命体(魔力)

 ・不可視の魔力生命体。

 不可視とはいうが、空間が陽炎かげろうのようにゆらゆらとしているのが分かる。

 高濃度の魔力を衝撃波として放ち、周囲を破壊しながら純粋な魔力を撒き散らす。

 この放出された魔力によって、素養のある者は魔法や異能に覚醒することもある。

 弱点は、身体が魔力でできているので、衝撃波(魔力)を放ちすぎると消滅すること。

 『定期的に魔力の濃い場所で発生して、全てを破壊していく』

 『大戦時はそれはもう酷かったらしいですね』


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