第41話米

 そう言うと父上は俺の事をまるで虫けらを見るかのような目で見た後、去って行く。


「絶対に許さない……父上も、弟であるベルホルンも、そして俺をコケにした貴族連中も、全て許さない」


 そう心に誓いながら、父上の姿が見えなくなった後も、消えた方向を睨み続けるのであった。





「米を作りますわっ!!」

「こ、こめ?」

「なんだそれは? 食べ物なのか?」


 タリム領に無事帰ってきて一夜明けたわたくしは、ブレットや父上達タリム領発展を進めるメンバーの中心を呼び集めるや否やそう声高々に叫ぶ。


 しかし麦が主食である我が帝国で暮らす人達からすれば、米というものは食べた事もなければ見た事もない代物のようで、皆一様に『何だそれは?』という表情をしていて何だか面白いと感じてしまう。


「そう米よっ!! またはライスとも言いますわっ!」

「ライス、ライスねぇ。 一応昔読んだ放浪記にて記されていた、ここから東に行った国で主食として食べられている穀物であるという、そのライスで良いのか?」

「そう、そのライスですわっ!! 私のスキル『ググレカス』を使ってこの三年間は飛躍的に我が領土は目に見えて発展したと思うのだけれども、それと同時に痩せ細った土壌も改良を重ねてきましたわ。 そして、土壌を改良した一番の理由は米を育てる為ですわっ!!」


 ですわーーーー。


 ですわーー。


 わー。


 そして、私の魂の叫びが部屋の中で反響すること数秒、ブレットが疑問を口にする。


「それ、今まで通り小麦じゃんダメのか? 小麦なら今までと栽培方法もあまり変わらないであろうし、何よりも農家的にも勝手を知っている方が楽なんじゃないか?


 ブレットが提示した疑問文は最もな事であろう。


 逆にいえば先ず言われるであろう事であるためその言い訳、ではなくて切り返し、ではなくて、米でなければならない理由はしっかりと考えてある。


「米の方が小麦の八倍、収穫量があるわ」


 誓って嘘ではない。


 盛っただけである。


 奇跡的に豊作で、災害もなく、土壌のコンディションも獣害も何もなく完璧に育て、収穫すれば小麦の八倍くらいの収穫量を見込めるという話を聞いたことはある。


 それに収穫量も、普通に育てても小麦の数倍は確実に収穫できるのも確かである。


「「「は、八倍だとっ!!」」」

「ええ、八倍ですわ」


 ふふふ、米の偉大さに平伏すがいいわっ!!


「ちなみに、食べ方などは分かるのか? 他国では主食として食べられているみたいなのだが『こめ』とやらもパンにして食べるのか」

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