第37話婚約破棄をしてからずっとだ






「くそっ、くそっ、くそっ!! この俺をコケにしやがってっ!!」


 パーティーが終わった後、俺は苛立ちのままに廊下に飾ってある花瓶を払い飛ばし、花瓶が割れる音が廊下に響き渡る。


「ふー、ふー、こんな屈辱的な事をされたのは初めてだっ!!」


 しかし、花瓶一つに八つ当たりした所で俺の怒りは収まる訳もなく、他に壊せそうな物は何かないかと周囲を探す。


「荒れているようだな、我が息子、レオポルトよ」

「ち、父上っ!?いらしていたのですかっ!?」


 そして俺は、怒りで周囲が見えていなかったようである。


 父上が俺の近くまでやって来た事にすら気付けないなど、とんだ失態だ。


 それもこれも全てシャルロットが悪い。


 全てアイツのせいである。


「当たり前であろう。 我に相談もせず無断で開催したパーティーだからな」

「父上……流石に過保護が過ぎますよ。 俺ももう父上の手助けや助言が無くとも一人でパーティーくらい主催者として開催する事など容易ですよ。 なんせ、この国の未来に立つ者ですからね」


 全く、過保護な親を持つとやる事為すこといちいち首を突っ込もうとするから鬱陶しい。


 俺ももう二十歳、今年で二十一歳である。


 流石にもうそろそろ子供扱いはやめて頂きたいのだが、王位継承権を維持する為には我慢するしかなく、それがまた腹立たしい。


 シャルロットと婚約破棄してからずっとだ。


 俺は三年前のあの日からずっと父上の顔色ばかり伺って生きてきた。


 しかし、父上も父上だ。


 きっと父上のことだからタリム領が発展する事など知っていたに違いない。


 元婚約者であるシャルロットの家が治めている領地であるにも関わらず、当時まだ婚約破棄をしていなかった、婚約者である俺の耳にはそんな話は何一つ入ってこなかった。


 そもそも父上で無くとも、当時婚約者であったシャルロットから一言もそのような話をしてこなかったと言うのは王国、そして将来の国王に対してあまりにも不義理かつ失礼な行為ではなかろうか。


 それも含めて今回の件を罰しても良いだろう。


「いや、今回の件で我はようやっと判断したよ。 次期国王となるべき者を」

「おぉ、それは素晴らしいっ。俺ももう今年で二十一歳ですからね。これ以上待たされ、このまま歳ばかり増えていったらと心配でしたよ」


 しかしながら悪い事があれば良い事もあるようで、父上の口からずっと聴きたかった言葉、将来の国王を決めた旨の言葉を聞く。


これでやっと、肩の荷が降りた。


そもそも優秀な俺は初めからシャルロットとは婚約する必要はなかったのだ。

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