第264話 ブルータス、お前もか





「カイザル様、今日は約四十名ものメンバーが排卵日前でございます」

「よ、四十名……」


 今回の功績により自称筆頭奴隷からついに自称が取れ、正式に筆頭奴隷となったサラからこの人数を聞いて『今日は少ないな』と思えてしまうのはどう考えても異常であろう。


 そもそもダークエルフなどは満月に排卵日になりやすいのでまさにその日は地獄である。


 それでもここ最近では妊娠した者も少しずつ増えていき、一日でこなす回数は少なくなってきているのでだいぶ楽になった方である。


 回復魔術を覚えてなければ間違いなく俺は干からびていたことだろう。


 酒池肉林ならぬ肉肉肉肉である。


 そんな事を思いながら俺はこな事になってしまった四年前のあの日の事を思い出す。


 結局俺はクロード姫の婚約者とったのだが、ただ三年間の猶予を後日皇帝陛下との話し合いの末もらう事ができた。


 当初はこの三年間でどうにかしてやろうと思っていたのだが、むしろ逆にこの三年間で外堀を完璧に埋められてしまっていたと気づいた時には時既に遅し。


 そしてその外堀を埋めたのが俺の奴隷達だというのだからまさに仲間だと思っていた者に後ろから刺された気分である。


 思わず『ブルータス、お前もか』と言いかけた程だ。


 しかしながら話を聞けば奴隷達は俺の為にと行動していたようで良くも悪くも忠誠心が引いてしまうくらい高すぎただけであるという事がわかった。


 むしろこれは近くにいたにも関わらず気づく事ができなかった俺のせいだろう。


 奴隷の管理もできないとは、実に情けない。


 というか王国をプレゼントって何? 普通にもうこれ俺後戻りできないやつじゃん。


 いらないって言えないやつじゃん。


 むしろ俺はクロード姫と婚約した時には既に奴隷達によって逃げ道を全て塞がれていたという事ではないか。


 そしてこのまま俺はあれよあれよと王国と帝国を無事(断ることができるのならば断りたい)手に入れることができたのである。 俺、欲しくなかったんだけど……ただスローライフを過ごしたかっただけなんだけど……。


 王国と帝国を手に入れ、俺はクロード姫を娶って晴れて新皇帝へと成ったわけなのだが帝国貴族には反対するものはいなかった。


 もちろん俺の奴隷達に怯えていたというのも大きいのだろうが、結婚相手が皇族であるクロード姫でり何だかんだ言っても俺も公爵家というわけで皇族の血は流れている。


 そして何よりもこの状況で皇帝陛下が引退宣言をし、ダグラス殿下が皇位継承権の放棄を宣言したというのが大きかった。


 そこへクロード姫と結婚する皇族の遠縁である俺に白羽の矢が刺さるのは当然であると言えよう。


 むしろでき過ぎているためどう考えても裏でこうなるように仕組まなければ無理であり、この筋書きを描いた者を炙り出すために『嘘偽りなく教えてくれると、俺と一分間ハグできる権利』で奴隷達に聞こうとす

して一人目である自称筆頭奴隷であるサラが全てゲロりやがったではないか。 



─────────



 次回はいよいよ完結です。


 更新日は金曜日に更新いたします。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る