第229話 なんと情けない事か
◆
とある休日の正午、カイザル様が一人(実際には一週間に一回行われるカイザル様を隠れて見守る部隊構成員選抜トーナメント戦を勝ち上がった上位五名の奴隷が常に隠れて側にいるのだが)で『現実逃避の為の散歩に行ってくる』とここ最近日課になり始めた散歩へと向かうのを見て私はカレンドールとモーリーを招集して第一回秘密会議を開催する。
「どうしたのかしら、ブリジットさん。 いきなり私達を呼び出すなんて珍しいわね。 何か困ったことでもあったのかしら?」
「あの、今すぐ部屋に篭って新しい発明品を完成させたいのですが?」
そしてわざわざ呼び寄せた二人は今私達の立場をいまいち分かっていないようである。
そんな彼女達を見て私はむしろ今日二人をこうして呼んで良かったと思うほどに事態は深刻な状態になっているのだ。
「私がなぜ貴女達二人をここに呼んだのか分からないようであればかなり危機感がないとしか言いようがないですね」
「危機感が無いって、どういうことかしら? 今や私達のレベルは全員三百は余裕で超えており、私達を脅かす存在といえばカイザル様かそのカイザル様の奴隷くらいだと思いますが?」
「そこに私の兵器も加わるからもう鬼に金棒ですっ!! 向かう所敵なしとはこの事ですねっ!!」
しかしこの私がここまで言ったにも関わらず二人の回答は見当違いで擦りもしないではないか。
私からすればなぜ分からないのか理解に苦しむ。
「どうして分からないんですか? 私たちここ最近影が薄くなっているという事にっ!! このままでは『あ、そういえばそんなヤツいたなぁー』とカイザル様に思われても良いんですよっ?」
「わ、私はカイザル様の婚約者ですし……影が薄くなったところで婚約者という立場が無くなるわけでは──」
「他の奴隷にキスからその先その他諸々先を越されても良いんですか?」
「そして私は、私が想像した物が作れる環境と、カイザル様の意見が聞ける環境があればそれだけでいいですね」
「──それは許せないわっ!!」
そしてやはりというかなんというか、カレンドールはカイザル様の婚約者という立場であぐらを描いていたようである。
なんと情けない事か。
しかしながら私が言った内容で事の重大さに気づいたようで一安心である。
ちなみにモーリーに関しては初めから期待していなかったので『やっぱりな』と思ってしまう。
「でもモーリー、異性としても好かれればより長くカイザル様と一緒にいられる時間が増えるんだけど、それがどういう意味か分からない貴方では無いでしょう? 本当にそのチャンスを棒に振っていいんですか?」
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