第181話 考えるだけ無駄な気がしてきた

「残念ですが、君如きトカゲがカイザル様の婚約者になれると思ったら大間違いだよ?」


 そしてその時、俺の後ろから聞き覚えのある声が先程のファルールへと返すではないか。


 それと同時に俺は確信する。


 これは面倒臭い事になるぞ、と。


『あ? そういう貴女は誰なのよっ!? 今は私とカイザル様が話しているのですっ! 関係ないドラゴノイドはしゃしゃり出てこないでくれるかしら? そもそもドラゴノイド風情が高貴なドラゴンである私に対してトカゲなどとは自殺志願者という事で良いかしら?』

「おいトカゲ。 なんなら今からこの僕がっ!! カイザル様の奴隷であるっ!! このっ!! 僕がっ!! 君を完膚なきまでにぶっ飛ばしてあげようではないかっ!!」


 なんだろう。 奴隷を自慢するのやめてもらって良いですか?


 なんか首輪を見せつけるようにしてるし……。


 奴隷が奴隷である事を自慢したくなるほどに高待遇で満足できているのだと思えば嬉しいくもあるのだが、これでは俺が変態みたいに思われるじゃないですか、ガレットさん。


『カイザル様の奴隷……ちょっと良いかも……。 じゃなくっ!! 言ってくれるじゃないのっ!! 前の私でも簡単に貴女如き簡単に羽虫の如く踏み潰せたのだろうけれども今はカイザル様から頂いたこのっ!! 美しいっ!! 装備品がっ!! この!! ほらっ!! とっても美しい装備品がっ!! ある私の敵ではないわねっ!!』


 何故かファルールはファルールで装備品自慢してるし……。


 そして学園の闘技場をぶっ壊しながらバトルし始める二人なのだが、そもそも俺には一応・・婚約者がいるというのを教えれば良いだけの話がなんでこんな面倒臭い事になっているだろうか。


 ……どうしてこうなった。


 そう思いながら俺はガレットとファルールが吐いた炎が激突して爆発するのをハイライトが消えた目で眺める。


 そして、その戦闘に横から「カイザル様の婚約者として聞き捨てなりませんねっ! 二人同時にかかってらっしゃいっ!!」と叫びながら乱入するカレンドールの姿も見える。


 カレンドールってこんなキャラだったっけ?


 もう考えるだけ無駄な気がしてきた。


「ご主人様っ!! 私も混ざっても良いでしょうかっ!?」

「ああ、もう何が何だかわかんないし、良いんじゃないのか?」

「わかりましたっ!! それではブリジット、行ってきますっ!!」


 そして、まるでドッグランに入り『友達の所に遊びに行っても良い?』とご主人様の許しを得る犬のような表情で、早く戯れあいたくてソワソワしながら聞いてくるブリジットに俺は乱闘に混ざる許可を与えると『ばびゅんっ!!』とすっ飛んでいくではないか。

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