第180話 無視したら一生後悔するような音

──キュンッ


 ん? 今なんかここで無視したら一生後悔するような音が聞こえた気がしたのだが気のせいだろうか?


 先ほどと言い、今といい、何だかとんでもなく胸騒ぎがするのだがきっと気のせいだろう。


 そもそも音を聞いただけで不幸になる音があるのならば是非聴かせて欲しいくらいである。


 そんな音があればもはや無敵であろう。


 音を防ぐ事など真空の膜で覆わない限りほぼ無理に近い。


 防音だとしても完全に防ぐにはかなりの厚さが必要だろうし、ほんの少しでも隙間が空いていれば防ぐ事ができない事を考えれば今この世界の科学技術は当然ながら魔術技術であったとしても防ぐ方法は無いに等しい。


 俺であっても防ぐ事は無理かもしれないと思えるくらいにはぶっ壊れた攻撃であるのは間違いがない。


『ありがとうございますっ!! 娘の命だけではなく我々ドラゴンが装備できる装備品まで頂けるなんて、なんとお礼すれば良いものかっ!!』

『本当に、私も含めてバカ娘が申し訳ございませんでしたっ! 私からは夫と娘共々カイザル様のお役に立てるように頑張りますのでっ!! しかしながら当然これだけでは感謝しても仕切れない程でございますので、後ほどまた別途今まで貯めてきた脱皮時の鱗(勿論逆鱗込み)と財宝などをカイザル様にお渡しいたしますっ!!』

「いや、別にそこまでしてもらうと逆に申し訳なく思ってしまうから程々で良いからな? 程々で。 何なら竜の国への招待とかその程度で良いからな?」


 そして、ファフニールとルールールーが涙を流しながら俺へ感謝の言葉と共に後ほどお礼の品をお送りすると言うのだが、財産全部送りつけてくる勢いなので取り敢えずはお金がかからないであろう竜の国への招待でも構わないと別案件を提示してみる。


 正直竜の鱗や財宝よりも竜の国に招待してくれる方が有難いし、興味がある。


 やはり、せっかくこの世界に来たのだから観光がてら異世界だからこそ体験できる場所に行ってみたいのもである。


 というかむしろめっちゃ行きたいまである。


『あ、あのっ……カイザル様っ!!』


 そして今まで静かにしていたファルールが何故かもじもじしながら近づいてくると意を結したように口を開いて俺を呼ぶのが、そのファルールが醸し出す雰囲気に先程感じた音の胸騒ぎの理由の答えが分かった気がした。


「ど、どうした? それはそうと身体は大丈夫か?」

『あ、はいっ!! カイザル様のおかげで身体は大丈夫ですっ!! そんな事よりも今カイザル様には恋人、または婚約者はいますでしょうかっ!! 私、自分よりも強い雄がタイプなんですっ!!』


 頼む、俺の勘違いであってくれと思いつつもさりげなく話題を変えようと試みるものの、熱した鉄板に水滴を落とすかの如く無駄であった。

 

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