第153話あぁ、明日が楽しみである
◆
おかしい。
こないだカイザルに決闘を申し込んでから、明日で一週間である。
それは、明日が決闘をする日でもあるのだがカイザルは一向に動こうとしないのである。
カイザルの事である。
必ず裏で汚い手段を使うために賊を雇うか、反則ギリギリの汚い手段を使うための下準備をするはずである。
そもそもカイザルは魔力も少なければ武術のセンスもない上に身体も鍛えていないのが分かる程に持久力もないくせにプライドだけは人一倍高いという人物である。
だからこそ俺はこないだの決闘でカイザルが施したであろうブリジットの洗脳方法を見つけ出す事ができなかった事を悔いているのだ。
そして次は同じ過ちはしないためにも今回は万全を尽くすために一週間という猶予をわざと設けたのである。
その間にカイザルが不審な動きをしたら直ぐに知らせるように後をつけさせているのだが、結局今日まで不審な行動を見せたという報告はなかった。
「くそっ! 本当に使えない奴らめっ!! 決闘は明日だぞっ!! この六日間何をやってたんだよっ!?」
あのカイザル相手に今まで六日間お前達は何をやっていたのだと、考えれば考えるほど腹が立ってくる。
こうなるのであれば初めから俺がカイザルの事を見張ってれば良かったではないかっ!!
そう思うものの過ぎてしまったのは仕方ない。
それに、どのみち俺が勝つことは決まっているのだ。
であれば、俺が勝った時はブリジットとカレンドールを一週間俺の奴隷に堕とすという手もある。
いや、この考えはかなりありなのではないか?
なんで今までこの考えに思い至らなかたのか? むしろこの考えを思いつけた俺はやはり天才だという事だろう。
奴隷に堕として、彼女達の本音を命令して聞き出せば良いのである。
その本音を観客が大勢いる場で言わせれば、カイザルの悪行を皆に知らしめる事もでき、俺の信頼や株も元通り、いや以前以上に人気も上がるはずである。
この完璧な作戦を思いついた俺はカイザルを尾行させて何の成果も得られなかった事など最早どうでも良くなり、早く明日が来ないかという待ち遠しさでウズウズし始める。
やっと、やっとあの糞野郎のカイザルからブリジット、そしてついでにカレンドールを救えるのだ。
そう思うと居ても立っても居られず、まるで子供が誕生日を待ち遠しく思うような感情になってしまう事は致し方ない事であろう。
「今まで辛かっただろうが、それも今日で最後だ。 明日になればその地獄から俺が救ってやろう。 待っていてくれ……ブリジット」
あぁ、明日が楽しみである。
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