第92話この世の終わり
なんかもう、この世の終わりのような表情をしているのだが、流石の俺もこればかりは首を縦に振る事はできない。
「そ、そうですか。 そうですよね。 私如きゴミのような人間にはもともと生きる価値などないというのに、ご主人様にこうして生かしていただけているという感謝も忘れて、ご主人様の子供が欲しいなどと、どの口が言えましょう。 ゴミはゴミらしく、慎ましく生きていきます」
「いや、そこまで言わなくてもいいのではないか?」
「じゃあ──」
「いや、子供はダメだぞ?」
「……そ、そんなっ!?」
あれ? デジャブだろうか?
今さっきも同じような、というか全く同じ光景を見たような気がするのだが気のせいだろうか?
「分かった分かった。 そのうち、そのうちなっ!! でも今ではないし、俺の気持ちの整理ができてからなっ!! 俺の気持ちの整理ができなければ作らないからなっ!!(子供を作るとは言っていない)」
「は、はいっ!! 大好きですご主人様っ!!」
何故だろう? ブリジットの笑顔を見ると騙しているような気がして胸が苦しいのは?
恐らく、気持ちの整理ができる事は今のところ少しも想像できないのだが、嘘は言っていない。
だから、俺は騙してなどいない。
ほら、人間は心変わりする生き物だから……(震え)
「それではその旨、他の奴隷達にも後日報告しておきますねっ!!」
「ブリジットよ」
「はい? ご主人様」
「いいか? この話は内密に頼む。 絶対だぞ? 絶対内密にするんだぞ?」
「内密ですねっ!! 分かりましたっ!!」
今までの人生でこれ程不安で心もとなく、信頼できない『分かりました』を聞いたことがあっただろうか?
返事の力強さに比例して不安度が増すのは何故だろうか?
あぁ、今からすでに胃がキリキリ痛む。
そして俺はお腹を抑えなながらブリジットに連れられて目的の大広間の扉の前までやってくる。
すると大広間の扉の前にはサラとメリッサが待機しており、俺が着くと同時に大広間の扉を開いてくれる。
「「「「「ご主人様、お誕生日、おめでとう御座いますっ!!」」」」」
そして、俺が一歩中へ入ろうとした瞬間、待ってましたと言わんばかりに、奴隷達皆の声で俺の誕生日を祝福されるではないか。
声をみんなで揃えるのも、きっと奴隷達は練習したのだろう。
それが分かるほどに、声は綺麗に重なっていたのがまた、くるものがある。
そして思い出す。
あぁそうか、今日は俺の誕生日だったんだ。
「ここ最近、奴隷達が私にご主人様のお誕生日を聞かれておりまして、みんなサプライズでと考えており、さりげなく私から聞き出したつもりだったのでしょうが、バレバレでしたもので。 でしたらみんなで一緒にお祝いをしましょうという事になったので御座います」
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