第84話閑話

 



 奴隷の朝は早い。


 朝日が登り、鳥が囀り始める頃に自称筆頭奴隷であるサラさんが起床時間を告げる為に一部屋ずつ起こしに来るのだが、基本的に私達はそれよりも早く起床しており、皆いつでも直ぐにダンジョンでも魔物討伐クエストでも行ける準備もできている。


 そして私達は一度大広間に集まり、ダンジョン組、クエスト組み、家事組、訓練組、新人育成組、休息組みへと、その日自分の割り振られたスケジュールの準備をし始める。


 ちなみにサラさんに関しては以前「もうご主人様にお願いして筆頭奴隷の肩書きをつけて貰えば良いのに」と言うとサラさんは顔を真っ赤にしてもじもじし始めると「は、恥ずかしいですし、それに私から催促してその肩書きを頂くのではなく、ご主人様から直接頂きたいのです」と答えたので、本人がそれで良いのならば自称筆頭奴隷でいいだろう。


 それに、サラさんの気持ちも分からない訳ではないので、今度サラさんに内緒でご主人様にさり気なくサラさんを筆頭奴隷にして頂くように言ってみるのも良いのかもしれないな、とも思う。


 そもそもサラさんは、私と同じ古参組みであり、当初より心細い奴隷達を優しく纏めてくれていた人物である。


 その為、サラさんが自称筆頭奴隷を名乗る事や、ご主人様より筆頭奴隷として任命されたとしても、奴隷達全員が問題ないと思っている。


 それにしても増えたなぁと、集まった奴隷達を見て思う。


 原因はこないだのスフィア様救出作戦。


 ホーエンハイム家が魔術の研究と称して大量の奴隷を所持しており、ご主人様が全員引き取ったのである。


 ある者は四肢が欠けており、ある者は肉を削がれ、あるものは皮と骨の身体であり、ある者は臓器を抜かれ、目を抜かれ、尻尾を切断され、死病、打撲、火傷、などなど。


 とにかく保護した奴隷の中に怪我や病を患っていない健康であると呼べる者は一人もいなかったのだが、それも全てご主人様がたった一度の奇跡で全て綺麗に治し、今では元気に私達と一緒に暮らしている。


 そして、人数が増えたと同時に種族もまた様々な種族が増えた。


 半分以上はヒューマンなのだが、中にはエルフ、ダークエルフ、ドワーフ、ハーフリング、獣人、ドラゴノイドと様々だ。


 その為当然種族が多くなると、多いなりに問題が出てくる。


 特に急ピッチに対処しなければならないのがケンタウロスのトイレ問題である。


 今現在ヒューマン用しかない為、それなりにトイレは苦労しているようだ。


 とにかく狭すぎるとのこと。

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