第69話物語のヒロイン、


 あの日、黒い仮面の君に助けられてから私の心は胸躍り、まるで物語のヒロインになったような高揚感を感じていた。


 いや、私は物語のヒロインなのだ。


 でなければ普通に考えれば私が危ない時に限ってピンポイントで二回も颯爽と助けになんか来ない。


 という事は、あの黒い仮面の君は私の事を好き、いや愛してる、いや溺愛しているに違いない。


 きっと黒い仮面の君と私では身分の差があり、表立って好意を伝える事が出来ないのだろう。


 クロード殿下でも、カイザル様でも無いとすれば一体誰なのか。


 きっと、男爵家の私とは、たとえ恋心を抱いても成就しないような関係なのかもしれない。

 

 だからいつも私にバレないように物陰から眺め、ピンチの時には姿がバレないように颯爽と現れ、助けてくれるのだろう。


 となれば平民か、高位の貴族かのどちらかなのだが、私としてはどちらでも良いと思う。


 というよりかは黒い仮面の君であれば平民だろうと高位貴族であろうと肩書や出自といったもの等は私からすれば些細な問題でしかないのである。


 そして私はあの日の事を目を瞑り、思い出す。


 初めて助けて頂いた時はいきなり過ぎた事もあり、そしてまさか助かるとすら思っていなかった為あまり覚えていないのだが、二回目に助けて頂いたときはこの両のまなこで黒い仮面の君の勇姿をしっかりと焼き付けているのでいつでも鮮明に脳内で再生する事ができる。


 惜しむ事はあの勇姿を絵画で残すことができないという事である。


 せめて私に絵心があればと、これほどまでに後悔した事はない。


 なので私は両親に駄々を捏ねて絵画のレッスンを受ける事ができた。


 ここ最近迷惑ばかりかけている私の我儘が、まさか意外とすんなり通るとは思わなかったので両親を説得する為の理由をあれやこれやと色々策を考えて来た意味はなかった。


 両親曰く、ここ最近のスフィアは不幸すぎて見てられない為、むしろもう少し我儘を言って欲しいという事らしい。


 金銭に関してはここ最近起こった事件により口止め料という多額の慰謝料をいただいているのでそれで支払うとの事。


 ならばという事で、この機会を無碍にする理由は無いのでこの際だからと少し高めの画材道具を一式買って頂いた。


 両親からしてみれば『こんなもの』であると思うのだが、私からすれば今から黒い仮面の君に会える方法は今の所、妄想か自分で描いた絵かの二択しか無いのである。


 せめて誰なのかヒントの一つでも去り際に教えて頂ければと思わずにはいられない。


 ならば、そのうちの一つである絵を描く道具は良いものを揃えたいと思うのは当然の結果であった。


 因みに絵画のレッスンは週二回しか無いのだが、それでも指導者が居るのとそうで無いのとでは雲泥の差であり、私がこの一週間ひたすらに絵を描いてきて上がった画力よりも先生に一度指導と練習方法を教えて頂いてからの一週間の方が見るからに画力が上達しているのが分かる。


 と言ってもまだクロッキーレベルの話で色を塗るまでになるにはまだまだ時間がかかりそうなのだが。



───────────────────────────────────────────────────


声で誰か分かりそう云々は、仮面で姿を隠せば何故か正体がバレないという古からよく使われている古典的なアレです_(:3 」∠)_w


コードギアスは大好物です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る