第53話智謀には驚かされてばかり

 そう不安そうに聞いて来るサラ。


「俺の行動で不安にさせてしまったのならば謝る。 申し訳なかった」

「い、いえっ!! ご主人様が謝る事はございませんっ!!」

「そもそも何故そんなに俺を慕ってくれているんだ? 慕ってくれる分には嬉しいのだが……」

「それはそうですよ。 なんてたってご主人様はただ死を待つだけであった私たちの前に現れた救世主、言い換えるのならば白馬のお王子様なんですもの。 皆ご主人様の為であればこの命すら捧げても良いとすら思っていますよ」

「せっかく拾った命なのだからそう簡単に命を捧げるとか言わないように」

「は、はいっ!!」


 何となくサラ、そして奴隷達の気持ちが少しだけ分かった気がするのだが、これは好意なのではなく依存なのではないのか? とも思ってしまう。


 しかし俺に依存する事で辛い過去や、この世界を生きていく強さを手に入れる事が出来るのならばそれでも良いとも思う。


「とりあえず話は戻すとして、今回は俺自身のレベル上げを重点的にやりたいと思っていたところだ」

「レベル上げですか……それでしたら少し遠く、帝都東側にあるダンジョンの方が効率的だと思うのですけれども、死の森がある南側へ向かっているように思うのですが……?」

「そうだな、これから向かうところは恐らくまだ未発見のダンジョンであるので皆今から向かうダンジョンについては誰にも言わないように。申し訳ないがこれについては念には念を押したいため命令させてもらう」


 そう、今俺が向かう場所はゲーム内でよくレベル上げでお世話になったダンジョンであるのだが、この世界ではまだ未発見のようなのである。


 それは言い換えれば俺の戦い方などを他人に見られる心配が殆ど無いという事でもあるためむしろ好都合と言えよう。


 そして、観光という名目で思う存分ダンジョンを人目も気にせず、俺のやりたいように楽しむ事ができる。


 控えめに言って最高である。


「さてと、たしかここらへんだなっと」


 そして俺はマップを広げながら死の森の手前で目的のダンジョンの入り口を探す。


「あった……」

「こ、これがダンジョンの入り口なんですか? 私にはただの苔むした巨大な岩にしか見えないですね……」


 さり気なく、そして俺の隣にいるのが当然とばかりに寄ってきたブリジットが不思議そうに岩を見つめながら言う。


「ああ、間違いない。 一見ただの巨大な岩いしか見えないのだが、っと……このように手をかざして炎と水と風の魔力を注いでやれば、この様にダンジョンの入り口が現れるようになっているんだ」

「さ、さすがカイザル様です。 スフィアの事と言いカイザル様の智謀には驚かされてばかりです」


 そう言うブリジットの目は、いや俺の話を聞く奴隷達の目はキッラキラさせながら俺の話を聞いていた。

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