第48話それが決闘のルールでございます
そしてクロード殿下はブリジットへ抱きつこうとするのだが、ブリジットは抱きつこうとしてくるクロード殿下の両腕を数歩後ずさりして避けてしまう。
その瞬間時が止まったように静まり返る野次馬とクロード殿下。
そして、まるで汚物を見るかのような目線でクロード殿下を見るブリジット。
スフィアはというとおろおろとするばかりなのだが、意を決したかのように前に出てブリジットへと近づいていくのが見える。
いつも誰かの陰に隠れて表舞台には上がろうとしないスフィアがこういう場所に出て来るのは彼女にとってかなりの勇気が要った事だろう。
「ブリジット……どうしてしまったの? また前みたいに楽しくみんなで過ごしましょう? クロード殿下もブリジットの為に動いてくれたんだよ?」
「私は、何も頼んでいない」
「……っ!?」
「カイザル様の奴隷という立場を解放してほしいなんて一言も言っていない」
「……ブ、ブリジット?」
「きっと、貴女みたいに何も知らないままだったら、もしかしたら……とも思うのだけれども…………ごめんなさい。 言い過ぎたわ」
そして二人はそれ以降言葉を交わさずに、ブリジットは俺の元へと歩み寄るのだが、俺は声を大にして叫びたい。
何も分かっていないのはブリジットの方で、むしろ俺の方が若干迷惑をかけられていた立場であり、今のブリジットは自分で考えたオリジナルの都市伝説を信じているだけに過ぎないと。
「ご主人様、隷属の首輪をおはめ下さい」
そして常に隷属の首輪を持ち歩いているような変態であると。
そもそも何で首輪なんだよ。 別に首輪じゃなくても良いだろ。 呪印じゃダメなんか? と思うのだが、新しい玩具を前にした犬の様な表情で見つめられては駄目だとも言えない。
むしろブリジットの本来の目的は首輪をつける口実を手に入れる為だったのではないか? とすら思えて来る。
いや、きっとそうに違いない。
「な、何でだっ!? ブリジットッ!!」
そんな、実に嬉しそうに自ら俺へ隷属の首輪を差し出してくるブリジットに、クロード殿下が悲痛な表情で叫ぶ。
俺としてはブリジットにもっと言ってやって欲しい所だ、と心の中でクロード殿下を応援する。
「何で? それは私がカイザル様の奴隷だからで、私がカイザル様の奴隷となるのを望んでいるからです。他に何か?」
「なっ……か、カイザルっ!! 貴様ブリジットに何をしたっ!? 言えっ! この卑怯者めがっ! こうなる事が分かっていたから決闘もわざと負けたんだろっ!! まさかお前がここまで最低だとは思わなかったぞっ!! 早くブリジットにかけた洗脳系魔術か何かを解きやがれっ!!」
「申し訳ございませんが、今回の決闘では隷属のみ解放という事なのでその他については了承するのは致しかねますし、それが決闘のルールでございます」
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