第24話いいからさっさと教えろよ



 最近隣の席のブリジットがやけにおとなしい事に俺は違和感を覚えていた。


 一週間ほど前に、モーデル家の闇の部分に触れて、その闇の部分を俺が知ってしまっているのだと気付いてしまった(と勘違いしている)ブリジットは放課後、俺を雑木林に呼んで早く楽にしてくれと懇願してきた。


 その時の顔は、まるでアンデットか何かと思える程に生気を失っており、目は虚ろで酷いクマが浮き出ていたその姿は、同一人物だと言われても信じれない程にボロボロな姿をしていた。


 それほどまでに彼女は正義感が強く、それ故にモーデル家の闇の部分が許せなかっただろうし、信じられなかったのだろう事が窺える。


 そんなブリジットなのだが学園こそ登校しているようなのだが以前の様に俺を尾行するわけでもなく、常に何かを調べていた。


 普段のブリジットであれば本や書類を眺めるのではなく木刀を振り回している方がよっぽど彼女らしい。


 それとなく彼女が調べていることが気になって読んでいる書物や書類等をのぞき込んでみるも魔法で盗み見れないようにされており、彼女が何にかに取り憑かれたかのように調べている物が何なのか分からずじまいであった。


 モーデル家の闇の部分に触れる手がかりを調べているのだろう。


 今日この時まで俺はそう思っていたし、間違いないとも思っていた。


 あの日と同じ放課後の雑木林にて、俺の前で膝をつき頭を垂れるブリジットを見るまでは。


「一体なんのつもりだ?」


 本当に訳が分からない。


 どの角度からいくら考えてみても、ブリジットが俺を恨みを晴らすべくこの場に呼んだのならばまだしも、何故俺の前で片膝をつき頭を垂れているのか皆目見当もつかない。


 分からないのならば聞くべきであると俺は直球で彼女へと問いかける。


「いままでのご無礼をお許しください」

「……………………は?」

「カイザル様の慧眼たるや、凡人であるわたしでは理解に及ぶことができず、それどころか見下して蔑むことしかできなかった私を謝罪するとともに、いままでの無礼な態度を謝罪いたします」


 そして、聞いてみたはいいものの余計に訳が分からなくなる。


 もしかしてブリジットはさらされ続けた強いストレスの日々で頭がバカになったのではなかろうか?


 そう思考する事を投げだしてそう思いたい気持ちをぐっと堪える。


「許す、許すから説明をしろ」

「カイザル様の懐の深さ、痛み入ります」


 いいからさっさと教えろよ、と思うものの、何も言わず言葉の続きを待つ。


「カイザル様の行動に違和感を覚えた私は、ここ一週間何故カイザル様はスフィア令嬢との婚約を、それもあのような仕方で破棄しなければならないかを調べておりました」

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