第72話 金銭感覚
そして数ヶ月間の浮気や無駄使い、そして俺への経済DVの証拠を集め終えたので、弁護士からのお墨付きも貰った俺は間男宅、自宅、義理実家へ内容証明を送る事にする。
内容証明が届くまでに俺は少ない荷物を纏めて元嫁には出張と嘘をつき、家を後にする。
そもそも付き合い始める、そして結婚してからも出張などした事がないのだが、元嫁は怪しむ事をする素振りすら見せず、むしろ嬉々として喜んでいたようにも見える。
きっと、これで間男を自宅に呼べるとでも思っているのだろう。
ちなみに間男には会社の方で俺は昇進のために出張という嘘の通達をしてもらっている。
そん時の上司の、まるで苦虫を噛み潰したような顔は傑作であった。
これからは俺と同等、下手をすれば追い抜かれるかもしれないと思っているのが手に取るように分かり、そしてやはり有る事無い事俺の悪い噂を流し始めているようである。
俺が今までなかなか昇進しなかったのにはこういう背景があったんかと思うとやるせないと思う反面、今回の昇進は間男である上司のお陰でもあるので自業自得であろう。
交わした内容といえば今回の事を外部に漏らさないという会社側の要求と共に俺の昇進と上司の懲戒解雇で手を打たないかと言われて、俺がそれに承諾した形である。
しかしながら俺は勿論外部には漏らしはしないのだが、人の口に戸は立てられないとも言うし、その件に関しては俺は預かり知らぬ事である。
今まで見て見ぬふりをしていたことも調べはついているのでそれで信用第一であるこの会社がどうなると知ったことでは無い。
そして、俺は表向き出張、中身はほぼ有給という名の小旅行へと旅立つ。
勿論ほぼ有給といえど少しばかりの仕事はあるので先方の挨拶周りを小一時間ほどで全て済ませ、あとは一人でゆっくりと観光地巡りである。
今日は内容証明が届く日でもあり給料日でもある為俺は早速ATMへと向かい五万程下ろしてくる。
ちなみに給料の振込先は当然の如く変更しており、さらに他の銀行口座は引き落とせなくしており、クレジットカード類も全て本日づけて停止からの再発行手続きは済ましている。
あの元嫁と上司に豪遊させるために働いてきているわけではないので、一円たりとも今日限り渡すつもりはない。
そして、俺は手元の五万円を見て、あまりの大金に罪悪感を感じる。
たかが五万円を下ろすという行為に、である。
その事に、いかに俺の金銭感覚が狂わされ、元嫁に洗脳されていたのかというのが分からされる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます