第60話 これは、やばい

 新谷さんを異性として認識し始めて初めてのデートでもある。


 いた、二人で一緒に近所にある大型スーパーへと歩いて向かうだけなのだけれでも、ものは考えようだと私は思っている。


 男性と二人で外を歩き、一緒にショッピングをして、帰る。


 これはもう、誰が何と言おうとも立派なデートであろう。


 ただ、心配なのは新谷さんの精神面であろうか。


 コンビニへは行けるようになっているみたいなのだが、こないだの公園デートの時みたいにいまだに人混みは苦手みたいである。


 その為大型スーパーの前に一度普通のスーパーを挟んでからの方が良いとは思うのだけれども近所に無いため一段飛ばして、コンビニから大型スーパーへとランクアップという流れである。


 とは言ってもイーオーンと比べれば全然小さな方なので、まだマシだろう。


 あるのは二階部分にダイタイソウ、ラーメン屋、ゲームセンター、文房具店、野外駐車場、一階部分に食品売り場、TATUYA、ドラッグストア、婦人服売り場、と言った感じの総合スーパーである。


 その為食品売り場だけであれば、普通のスーパーと比べれば少し広い程度だろう。


 それに新谷さんも「あそこならば大丈夫そう」と言っていたので本人の意思を尊重したいとも思う。


 公園は、新谷さん曰く「まだ俺には早すぎたみたいです」とは言っていたのだが、途中引き返すことも無く公園へとたどり着いていたので、近所の大型スーパーならば行って帰るくらいならば大丈夫そうであると、私も思う。


 そう、出かける前は思っていたのだがいざ一歩外に出てみると早速新谷さんが、まるでお化け屋敷を怖がる子供のように私の左腕にしがみ付いて来るではないか。


 やはり、コンビニへ向かうというのと大型スーパーへと向かうというのとでは精神的なプレッシャーは違うのだろう。


 しかしながらこれは、やばい。


 私はまだ新谷さんを異性として意識し始めている事に気付いたばかりであり、また恋だの愛だのという経験すら殆ど無い今の私にとって、意中の男性から左腕を抱きしめられるという事はあまりにも刺激が強すぎる。


 それでも、私がしっかりしなければと自分自身を奮い立たせながら新谷さんと一緒に徒歩三十分の所にある大型スーパーへと向かう。


「や……やっと着いた……」

「頑張りましたねっ! 新谷さんっ!!」

「いえ、朝霧さんのお陰ですよ。 ありがとうございます」


 そして歩くこと小一時間、本来かかる時間の約倍近い時間をかけて私たちはようやっと目当ての大型スーパーへと着くことができた。

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