第55話 パンドラの箱
「それで、結局お母さんは好きな人ができたの? というかようやっと好きなんだと認めたの?」
「……え? ど、どどどど、どうしてそう思ったのっ!?」
「いや、どうしてってあんたね。 今のお母さんを見たら恋に恋する乙女だって誰でも分かるわいっ」
「いやいや、そんなバカな……」
「…………」
「…………マジ?」
「マジです」
「マジだよ? お母さん」
そんな感じで心の中で勝ち誇り、マウントを心の中で取っていたのだが、千秋からいざ『好きな人はできたのか?」と聞かれると、なぜだか知らないのだが、ただ『そうです』と答えるだけが無性に恥ずかしく感じてしまい、思わず吃ってしまう。
それでも、さすがに今の私に好きな人ができたという事実は一応まだ誰にも言ってはいない為、好きな人ができた事はバレていないだろうと思っていたのだが、どうやら少なくとも千秋と美奈子にはバレバレであったらしい。
「え? なんで? え? や、やば……は、恥ずかしい……っ」
「何いきなり恥ずかしがってんのよ?」
「さっきまであんなにイキっていた雰囲気だったのに一瞬にして借りてきた猫状態ね」
「いや、だって……好きな人がいるって、自分じゃない誰かに知られるのがここまで恥ずかしい事なんだって知らなかったし……」
「おぉ、よしよしっ! うんうんそうだよね。 好きな人がいる事が知られるのって恥ずかしいよねっ!」
「あぁーもうお母さん可愛いんだからっ! なでなでーっ」
そして、どうせ私に好きな人ができた事がバレたのならば言ってしまえと今の気持ちを友達二人に伝えてみたところ、何故か私が子供扱いされているように思うのだが気のせいであろうか?
その事に違和感を感じた私は、どう考えてもパンドラの箱だから聞かない方がいいという私の直感を無視して聞く事にする。
「え、えっと。 ちなみに二人に聞きたいことが一つあるのだけれども?」
「え? なになに? 言えることなら何でも言っちゃうよっ!」
「いいよ。 お姉さん達にドーンと聞いちゃいなさいなっ!」
「その、あの、ふ、二人の初恋っていつなのかなぁーと……お、思いまして」
「ああ、そんな事? 私は小学校三年生かな。 ちなみに相手は岡崎くん」
「私は小学校五年生だね。 私の初恋の相手は山田くんだったな」
あぁ、なるほど。
今私が通っている道は彼女たちにとっては小学生の時にはすでに通り終えた道だったのか。
なーんだ。 そんなことか。 蓋を開けてみればなんて事はない至って簡単な事だったじゃない。
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