第48話 気の迷い
◆
新谷さんが器用に座りながら眠り始めたのだが、それはそれで寝心地が悪そうなので起こさないように横にしてあげる。
そして次いでに膝枕なんかしてあげたりして。
他意は無い……無いはずである。
でも、私の膝を枕にして眠る新谷さんの寝顔を見るととても愛おしく思えてくるか不思議である。
よくよく見てみると、やっぱり顔が整っているだとか、まつ毛が長いだとか、そもそも私の膝の上で無防備に眠っている状況だとか、それら全てが愛おしく思えるし、心の奥底が温かい気持ちになる。
女性が男性に対して守ってあげたいという表現はおかしいのかもしれないのだが、私の膝で無防備に眠っている姿を見ると余計に守ってあげたいと思うのだから不思議である。
もしかすればこれが母性本能という奴なのかもしれない。
一瞬ではあるものの、この気持ちはもしかしたら恋愛感情なのかもしれないと思っていたのだが、恋愛感情ならば守ってあげたいとは思わないだろう。
むしろ守って欲しいと思うはずである。
なのできっとこの感情は恋愛感情ではなく母性本能なのだ。
そんな事を思っていると、気がつけば私の右手は新谷さんの頭を優しく撫で始めているではないか。
そして、撫でている事に気づき起こしてはいけないという感情に羞恥心も加わって新谷さんから離そうとするのだがおかしな事に私の右手は新谷さんの頭から離れるどころか撫でるのをやめてくれない。
さらにおかしな事に新谷さんを撫でてあげればあげる程幸せな感情が押し寄せてくると同時に愛おしいという気持ちが膨れ上がっていく。
あぁ、どうにかなってしまいそうだ。
可愛い。
愛おしい。
守りたい。
ずっとこうして膝枕をしながら頭を撫でてあげたい。
そして抱きしめたい。
キスをしてみたい。
「す、すみませんっ! いつの間にか痛いっ!?」
「へ? あうっ!?」
そう思ったその時、新谷さんが急に目覚め、起きあがろうとした為私の額と新谷さんの額とがぶつかってしまう。
え? ちょっと待ってっ! い、痛い、痛いけど、さっき私は新谷さんに何をしようとしてたっ!? え? 嘘っ!? それって私が新谷さんい感じているこの温かい感情は母性本能とかじゃなくて、い、異性としてす、すすすす…………いやいやいや……でも……、それってそういう事だよね? いや、きっと気の迷いに違いないっ。
正直言って物凄く痛いのだが、今の私はそんな痛みなんかよりも、先程私は新谷さんに何をしようとしていたのかという事で頭がいっぱいになってしまう。
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