第32話 小説
しかしながら、このお金をどうやって稼いだのだろうか?
気になる。
というか、お金の稼ぎ方ではなくて、新谷さんのやる事全てが気になって仕方がない。
絶対、こんな私を知られたら新谷さんに引かれてしまうだろう。
それに、新谷さんはただでさえ女性恐怖症に陥っているのである。
折角回復の兆しが見えてき始めた所で私が更に新たなトラウマを植え付けてどうするのよ。
でもでも、やっぱり気になるし……。
「小説」
「うぇ……っ!? しょ、小説?」
「ああ。 小説。 といってもそんな大層なものじゃ無いけどね。 お恥ずかしいは無しなのですが昔学生時代ラノベ作家を目指してたんですよ。 その夢の為に利用していたウェブ小説のアカウントがまだ残っていたからそれに久しぶりにログインしてね、それの広告料で稼いだお金で買ったんだ」
「へ、へぇー……す、凄い」
凄い読みたいっ!!
「まぁ、流石に俺の黒歴史やポエムみたいなものだから、アカウント名は秘密だけどね」
「えぇーっ! そこまで言ったら読ませて下さいよっ!」
「いや、流石に恥ずかしいからっ」
「良いじゃないですかっ! 減るもんじゃないっしっ!? きゃぁっ!?」
「うわっとっ!?」
少しはしゃぎ過ぎた私は、四つん這いで新谷さんへ迫ろうとして手を滑らせ、、そのままの勢いで新谷さんへだいぶしてしまった。
そして、私の胸で押し潰される新谷さんの顔面。
顔面蒼白になり急いで飛び退く私。
「ご、ごめんなさいっ!!」
「あ、ああ」
折角、折角新谷さんが頑張った日なのに、勇気を出して私の為にコンビニまでプリンを買ってきてくれたのに。
私のせいで台無しだ。
そう思うと自然と涙が出てくる。
「ど、どうしたの?」
そう心配そうに聞いてくる新谷さん。
本当は、トラウマを刺激されて恐怖心でいっぱいだろうに、自分の事よりも私の事を気にかけてくれる。
その優しさが余計に私の胸に突き刺さる。
「わたっ、わたっ、私のせいで、新谷さんの努力を台無しに、プリンをっ、ごめんなさいっ、折角っ」
もう、どう説明していいか、謝罪しなければと頭の中に言葉は溢れるもののそれを整理できない程テンパってしまい、そして余計に焦り、涙も溢れてくる。
「あぁ、成る程。 俺は大丈夫だからさ。 確かにびっくりしたけれども朝霧さん程の美人ならむしろ役得だよ。 ほら、プリン。 食べよ?」
「うん食べる……っ」
そして、美人だと言われただけで悲しい気持ちだけだった私の心に嬉しい気持ちが混ざってくる。
なんと単純な女であるか。
そして私は新谷さんの優しさに包まれながらプリンを食べる。
これはダメだ、癖になりそう。
そう思いながら。
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