第29話 今、最高に青春をしている
「……知ってるわ」
そんな事、言われなくても知っている。
だからこれ程までに苦しいのではないか。
どうせならば初恋の相手は好きな異性がまだいない、または両思いな異性を好きになれば良かったと思うのだが、好きになってしまった事はどうしようもない。
好きになる気持ちは理屈じゃないと良く言うけれども、その気持ちが痛いほど分かる。
理屈を並べて好きになれる人を選べる事が出来るのならば、俺は今これほどまでに苦しんでいない。
「まあ、初恋は実らないものだよ、ワトソンくん」
「誰がワトソンだ。 俺は貴様の助手になったつもりは、一度たりともないのだが? むしろ高井こそが俺の助手でワトソンではないのか?」
「何をっ!」
「今だってこうして何だかんだで俺のサポートをしようとしてくれているじゃないか」
「ばっ、ちがっ、違うんだからねっ! 別にお前が落ち込んでないか気になったからとか、落ち込んでたら話を聞いて少しでも楽になればとか、思ってないんだからねっ!」
「全部言ってんじゃんよ。 ま、ありがとう」
ほんと、良くできた友達である。
「まぁ、これでお前も俺の気持ちが理解できるよになったと言うわけでどうだ? 帰りファミレスで一杯茶でもシバキに行かないか?」
「
「お、おうそうだな。お母さんを好きになったのは俺の方が早いから俺が先輩で間違いないな。 さぁ、後輩は先輩の事を心の底から敬うように」
「ははーっ。 さす先輩っ。 さす先輩っ」
「ふむ、悪い気はしないな。 むしろ良い気分だよ、後輩くん」
「と言う訳でファミレスは先輩の奢りですねっ!!先輩に恥をかかせる訳にはいきませんからっ!」
「ぐぬっ、き、貴様っ! この俺を嵌めたがったなっ!?」
そして俺は思う。
今、最高に青春をしている──と。
◆
死んだように起きて、死んだように時間を浪費して、死んだように眠り一日が終わる。
この目から見える景色は白い靄がかかったように不鮮明な景色を映し出し、思考は靄がかかったように纏まらない。
そして少しだけマシになったかと思うとあの時の事を思い出してまた靄のかかった世界に戻る。
このままでいい訳がない。
彼女は大丈夫だと言ってはくれているのだが、実際に朝霧さんにも迷惑をかけているのも事実。
食費や光熱費もタダでは無い。
女性の一人暮らしは怖いからむしろ有難いといっているものの、それが俺に気を使わせない為の建前である事くらいわかっている。
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