第94話なんでもしますから
そもそも、他人の家に勝手に入って来てはパンツを盗むような奴が、さも当然のように来ているのである。
そしてあの高木さんがこんなチャンスを簡単に逃すわけがない。
それは逆に言うと簡単に諦めても良いと思える何かがあるに違いない。
そう、この脱衣所ないし浴室に隠しカメラを仕掛けて盗撮しているとか……。
やっているんだろうなぁ……高木さんだけではなく彩音も、麗華も。
下手をすれば三人ともデータを共有している可能性だってある、いや、しているだろう。
その考えに思い至った時、俺の羞恥心はついにどこかへ吹っ飛んでいった。
振り切ってしまったらもう盗撮されて裸を見られるくらいでは恥ずかしいとは感じない身体にされてしまった。
そして俺は死んだ魚のような目でシャワーを浴びて身体を拭き、制服に着替えて食卓に着く。
「もうっ! 早くって言ったでしょっ! もうみんな揃っているからねっ!!」
「遅いわよ、健介くん。 せっかくの朝ごはんが冷めちゃうわよ?」
「躾が必要でワザとやっているんならいつでもそう言ってくださいね。 別にそんな周りくどいことをしなくても私に行ってくれればいつでも躾けてあげますから」
「……ご、ごめんごめん。 早く食べようか」
この時食べた朝食の味は、砂の味がするのであった。
◆
「い、いたいどういう事だってばよっ!?」
「わ、わからねぇっ!! 俺にだってどうしてこうなっているのかわからねぇよっ!!」
「この世に神はいないというのかっ!? いや、今日この時に神は死んだっ!!」
俺達は三人揃って学校へ向かうのだがその道中、学校に近づくにつれて俺達の姿を見て涙を流す者、叫ぶ者、罵倒する者などが増え始め、最終的に学校へと着いた時には阿鼻叫喚であった。
「なぁ、親友よ」
そして、俺が席に座るや否や中川優斗が俺の方に腕を回して近づいてくるではないか。
その顔はまさに。ずっと探していた親の仇を見つけたような表情をしていた。
「邪魔。 そこ私のポジションだから。 いくら健介の友達だからといっても私達のポジションを勝手に奪わないでよねっ!」
「あ、そっすよね。 すんませんっ……」
しかし中川優斗は彩音により無理矢理その腕力で持って引き剥がされると、先程までの勢いはどこに置いてきたのかと言いたくなるくらいに失速して、すごすごと俺から離れていくではないか。
そして俺のスマホからアプリの着信音が鳴る。
『鬼っ! 悪魔っ! 裏山けしからんっ!! 俺達のアイドルである彩音ちゃん、麗華様だけでは飽き足らず、地下アイドルの姫と呼ばれ、コアなファンも多い美優ちゃんにまで貴様の毒牙にかけるなどっ!! そんな事が到底許される筈がないっ!! 許されたければそのノウハウを教えろ下さいっ!! お願いしますっ! なんでもしますからっ! 俺も美少女達のハーレムを作りたいんですっ!!』
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