第92話騙されてはいけない
高木さんのご両親は昨日あんな事があったにもかかわらず、一体何をしているのだろうか? 申し訳ないけど自分の娘に対しての危機管理の意識が余りにも低すぎると言わざるを得ない。
例えるのならばライオンを野良猫の如く外で放し飼いしているような無責任さである。
それによる糞尿や悪戯による被害レベルではない、人(俺)の安全が脅かされているレベルであると理解しているのだろうか?
理解していないからここにいるのだろうな……泣いてもいいか?
「それで健介君……」
「な、何でしょうか? 美優さん……美優ちゃん」
どうやら高木さんはさん付けで呼ばれるのもお気に召さない様である事が、一瞬だけ不機嫌になった表情から読み取ることができた。
こんな技術、高木さんの気分を瞬時に見抜ける技術を覚える必要のない人生を、送りたかった。
「健介君は今からお風呂でシャワーを浴びてくるんですよね?」
「うん? ……そ、そうだけど?」
「何でパンツを脱がないんですか?」
「…………はい?」
聞き間違いであろうか?
高木さんはきっとご乱心なのだ。
これが平常運転ではないという事を切に願う。
そもそも脱ぐも何も高木さんが脱衣所にいる限りはこの最後の砦であるおパンツ様を脱ぐ事はできないし、例え此処が俺の実家だとしてもおパンツ様がお守りしている御神体を高木さんに見せる行為はただのど変態行為でセクハラのなにものでもないではないか。
高木さんは俺にそのど変態セクハラ野郎になれとでもいうのだろうか?
「いや、ですからパンツを脱がないとお風呂に入ってシャワーを浴びれないですよね? それとも健介君はパンツを履いたままシャワーを浴びるのですか?」
え? 何で俺の方が常識がない人みたいな感じで言われているんだろう?
常識がゲシュタルト崩壊してしまいそうだ。
「もうっ、なかなかシャワーから出てこないと思ってきてみたら何で高木さんがここにいるのよっ!? というかいつどこから入ってきたのよ、まったくっ! あと、さもそうするのが当然であるかのような表所で強引に押し切り健介の裸を見ようとしちゃダメでしょうっ! 健介も健介で簡単に押し切られそうにならないでよねっ!!」
「彩音さん、邪魔。 どいてっ! 健介君の御神体見れないっ!」
「はいはい、見なくて良いから脱衣所から出ましょうねーっ」
いよいよここまでか。 そう思った時彩音が現れて高木さんを脱衣所から連れ出してくれるではないか。
ピンチの時に颯爽と現れて、救ってくれた彩音の事が女神の様に思えたのだが騙されてはいけない。
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