第89話そうなんだ……
頼むっ! 知っていないと言ってくれっ!
そう願いながら俺は彩音の返答を待つ。
「あぁ、健介が良く使ってるシリーズだよねっ? も、もうっ! 私と健介の仲だから良いけどっ、他の女の子にそんな事を聞いたらセクハラだから気をつけなさいよっ!!」
そして、彩音は顔を真っ赤にしてそういうではないか。
俺の心の中では『アウトォォォオオオッ!!』と審判が腕を振り下ろしている。
そう、俺の自家発電は間違いなく彩音に見られていると思って間違いないだろう。
ほんと、プライベートって一体どこにあるんだろうな。
俺には一生関わる事がないもののように思えてきた。
「ち、因みに彩音は俺のパンツを盗んだりとかは……し、してないよな?」
俺のスマホを遠隔操作して色々恥ずかしい光景を見ていた彩音の事である。
ここまで来たらこの際はっきりしておこうと、彩音も高木さんと同じように俺のパンツを盗んでいるのかと聞いてみる。
因みに麗華は、俺の推理が正しければ俺のパンツを間違いなく盗んでいるだろう。 それも常習性があると見ていい。
でなければ俺でさえ気付けなかったパンツの些細な違いに気づける筈がないのだから。
「私? 私は健介のパンツを盗んだりはしないわよ? 当たり前じゃない」
よ、よかった……流石の彩音でもパンツは盗んでいなかったようである。
「だって、盗む必要がないもの」
…………んん?
「盗む必要が……ない?」
「だって、私と健介の家は隣同士だし、両親同士も仲が良いから行き来し放題じゃない」
「そ、そうだな」
「だから
…………んんん? 俺には先程彩音が言った『取る』という言葉が『使う』に聞こえるのだが気のせいだろうか? そしてそれが本当にそう聞こえたのだとして一体全体何に使ったというのか。
そして、なぜそんなに顔が真っ赤になてまで何かを誤魔化そうとしているのか。
俺は何も聞かなかったし気づかなかったし見なかった。
「そ、そうなんだ……」
「どうしたの? 顔色が悪いけど……? まぁ、今日は色々あったから仕方がないよね。 きっと疲れが健介が思っている以上に溜まってて、今になって身体に疲れの表情が出てきているのかもね。 それに、時間も時間だし、早く帰って寝た方が良いわ。 ちょっとあの二人にも健介の具合が悪いから先に帰らせるって伝えてくるから」
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