第36話綺麗にカットされて編集までされている

 俺は氷室麗華を侮っていた。


 何故だかここ最近大人しくなったメスゴリラこと天上彩音とあの後何事も無く自宅で二人時間を過ごし、そういえばここ最近殴られたり蹴られたりとかいう事も無いし口調もどことなく穏やかに変化していっているので、どうやら反抗期もそろそろ終わりを迎えているようなので(何故それが俺へと向かっていたのかはまったくもって不明のままなのだが)そのまま淑女とまでは言わなくとも年相応の女性くらいには大人しくなってほしいと思いながら、昨日の俺の大勝利に浸りつつ一日を過ごし、朝起きて登校してみればこれである。


 俺が登校して席に着いた瞬間既に登校していた氷室麗華が近づいて来たかと思うと開口一番「それで、土日に私と天上彩音さんとでデートしてくれる約束は覚えているかしら?」と言いやがったのである。


 それも氷室麗華はただでさえ透き通るような凛とした声音の為教室の隅まで聞こえていたらしく(聞き耳を立てていたという表現が正しいかもしれないが)次の瞬間教室内の生徒が俺と氷室麗華を取り囲むのであった。


 当然その輪の中心には一緒に登校した天上彩音もいる訳で、どこで何言ってくれてんだよっ!と叫びたいのをぐっと堪える。


「えぇーっ!? 遂に彩音の想いが届いたのっ!?」

「ねねっ!? どういう事か説明しなさいよ彩音っ!!」

「ひ、氷室様がっ!? いや、そんな馬鹿なっ!?」

「嘘だ嘘だ嘘だっ!! きっと氷室様はこのボンクラに弱みを握られているに違いないっ!!」

「二股っ!? 二股なのかっ!? しかも学園のツートップをっ!!」


 そして聞こえて来る周囲の雑音。


 勝手なことを好き勝手言いやがって。


 しかしそもそも約束したのは昨日であり、しかも俺は催眠術中である。


 この後の処理を考えると糞程面倒くさいのだがここは昨日同様にすっ呆け作成で知らぬ存ぜぬを貫き通せばまだ何とかなるかもしれない。


 そこに希望がある限り俺は抗ってみせるっ!!


 それに、こんな場面を愛しの高木さんへ見せて誤解を与える訳にもいかないのだっ!!


「え? 俺そんな約束した──」

「私、余りにもあなたとデートできる事が嬉しすぎてスマホで御返事を録音していたんです」


そして俺がすっ呆けようとすると、それを遮って氷室麗華が胸ポケットから徐にスマホを取り出して操作をし始めると昨日のやり取りが再生され始める。


『今度の週末、天上彩音さんと交互にデートしましょう? 土曜日が天上彩音さんで日曜日が私。 どうかしら?』

『はい喜んでっ!!』


 しかも、途中の俺が一瞬ぐずる場面が綺麗にカットされて編集までされているではないか。



──────────────────────────────────────────


 二股なのかっ!? しかも学園のツートップをっ!!


 これを読んで「結婚したのかっ。俺以外の奴とっ!?」を思い浮かべた方は

フォローと☆を捧げないと解けない呪いをかけました(*'▽')うそです

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