第18話死体蹴りとも言う
◆
皆様は一難去ってまた一難という言葉を知っているだろうか?
もしくは泣きっ面に蜂でも構わない。
ようは死体蹴りとも言う。
普通に考えればそうなることくらいは小学生ですら容易に予想する事が出来たはずだ。
しかしながら地獄の様な昼休みを命からがら耐え忍んだ俺の精神的体力及び脳の疲労は凄まじく、そんな簡単な事すら予測する事が出来ず、そんな俺に警戒心など有ろうはずがなかった。
何度悔いても悔い足りない。
後は午後の授業を耐えて帰宅するだけだ。
天上彩音には、今日からは俺一人で料理も作るから家に来る必要はないというメールを朝のうちに送っていたから今日からわが家が唯一のオアシスにとなり、終ホームが終わった瞬間俺はマイオアシスへと光の速さで帰宅するつもりでいた。
そもそもあのアプリをダウンロードしている上に、この俺へと実際に催眠をかけようと試みたバカが二人もいる学校になど一秒たりとも居たいと思わない。
俺からしてみればサバンナに取り残された方がまだマシなレベルである。
そう、例えるなら檻の罠にかかり出れなくなったクマがいる、その檻の中へとぶち込まれている、そんな心境であると言えば分かりやすいだろうか?
しかも罠にかかったクマは二頭。
いくら何でも酷過ぎる。
それはさておき、当然俺は終ホームの終わりを告げる号令を聞いた瞬間、体はすでに教室の出口へと向かっていたのだが、この時の俺は真っ先に帰る事ばかりを考えており、天上彩音の事をすっかり忘れていた。
普段であればありえない凡ミス。
昼の地獄を抜け出したという気の緩みか、昼の疑獄でゴリゴリ削られた精神力や脳の疲労からくる思考力や判断力の低下なのか、今となってはどうでも良い。
問題なのは天上彩音に捕まったという事、それだけである。
そう、学園という檻の中には腹をすかせたクマが二頭いるのである。
一頭が満腹になってもう襲って来ないとしても、もう一頭は腹を空かせて目をギラつかせながらこの時を虎視眈々と狙っていたのだろう。
獲物を目の前でかっ攫われたのだ。
腹をすかせた獣の恐ろしさを俺は身をもって思い知らされる。
「何一人で帰ろうとしてるの? このボケナスが」
「い、いやー……観たいテレビが──」
「嘘。 今この時間にお前が観たいテレビ番組が無い事など、この私が知らないとでも思ってるの? あまり私を怒らせるなよ?」
「ひぅっ……」
余りの恐怖から息を吸うと喉から変な音が出てしまうがそれどころではない。
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