第124話
会場に戻ると、まだ壇上では挨拶の列が続いていた。
通常、上位貴族のみ直接挨拶をするというから、公爵に続いて辺境伯、侯爵、伯爵家までだろうか。
「リリー様!すごいわ!魔法を使ったの?」
会場に戻ると私の姿を見つけてローレル様が声をかけてくれた。
「ご無沙汰しておりますロバート様。少しリリーシャンヌ様とお話させていただいても?」
ローレル様がハッとしてお兄様に美しい仕草でお辞儀をしてほほ笑んだ。
「くすくす。ええ、もちろん。仲良くしてくださって嬉しいですよ。私はここにいても構わないかい?女性同士の話であれば飲み物でもとりに行ってくるけれど」
お兄様が聞かれてまずい話をするようならどっかに行ってるよと気を使ってローレル様と私に問いかけた。
「いいえ、今日は珍しくリリーシャンヌ様のおそばにずっといてくださるようですから、飲み物は必要ありませんわ」
ローレル様がややとげのある声音でお兄様ににっこりとほほ笑んだ。
「ああ、いや……はは」
ばつの悪そうな顔でお兄様が乾いた笑いを漏らす。
「ああ、ごめんなさい。リリー様から事情は聞いていますから。公爵令嬢だと知られないように距離を置いていたのですわね……。先ほどのその……あの方との会話も聞こえてしまいましたが。誠実に努力をしていたゆえの、行いだったのですね……誤解しておりましたわ」
誤解?
あの方ってエカテリーゼ様との会話っていうことだよね。ローレル様も見ていたんだ。
「誠実……か。いや、彼女のことを心から愛せなくて申し訳なかった。せめて彼女の望みはかなえようと罪滅ぼしのつもりでいうことを聞いていたけれど。それで結果として彼女も……妹も苦しめてしまったようで。ローレル嬢が妹を何度も助けてくれて感謝の言葉しかない。何かお礼をしたいと思っているのだが……」
ローレル様がふっと笑った。
「愛せないから申し訳ないって思うところが誠実だと思いますわ。そんなこと気に病むどころか政略結婚なのだから愛など期待するなと言い放つ男性の方が世の中には多いですのに」
お兄様がふっと笑った。
「愛を求めるのは贅沢な話なのかな」
「いいえ、情熱的な恋愛でなくとも、お互いのことを思いあう愛ならばそう難しい話ではないのでは?だって、親しい友達を作ることはできるでしょう?」
お兄様が今度はくすりと笑った。
「そうだね。ローレル嬢のような女性であれば友達になりたいという人間も多いだろうね」
ローレル様がお兄様に皮肉な笑みを返す。
「あら、そうでもありませんわ。私のように、あまりはっきりと物を言うのは苦手だという人も多いんですのよ?」
「そうかい?私は好きだけれど」
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