第109話
「エカテリーゼ様はよろしのですか?」
私に合わせた上着を仕立てると聞いた時に、再確認をした。
だって、とても大切な、王族も出席する場で婚約者のエスコートをしないなんて……。
私は、お父様にエスコートしてもらえばいいですし。お母様がいないので、お父様だって、エスコートする相手はいないもの。
「ああ。うん。ちょっともめているけれどね。大丈夫」
もめてる?
「も、もめてるって、そんな!エカテリーゼ様をエスコートしてください、私のせいで、お2人の仲が悪くなってしまっては……」
ちょっと、お兄様。
エカテリーゼ様、ぜったい、後々、私のせいだと言うと思うんですよ。ダメダメ。
ああ、お詫びの品を準備しておいた方がいいかしら?新しいドレス?宝石?話題のお菓子程度じゃだめよね……。
小さくため息を漏らすと、兄も同じようにため息をついた。
「いや、そういうことではないから、うん……大丈夫だ」
お兄様がちょっと寂しそうな顔を見せる。
「祝勝会までには解決させておきたかったんだけれど、ちょっと長引くかもしれないな……でも、大丈夫だから」
いやいや、大丈夫なの?本当に?
と、心配している間に祝勝会当日がやって来た。
出来てきた真っ白なドレスに身を包み、すっかり化粧も施され侍女たちに口々に褒められた時点で逆に不安になった。
おかしくないかしら?
やっぱり、白一色なんて無謀だったかしら?
ドレスの出来は本当に素晴らしく、光沢のある最上級の絹の布でドレスが作られている。デコルテは広めに出るデザインだけれど胸まで出ていない上品さもある。袖は流行の小さめのふくらみの物。ウエストは適度に引き締めるデザインのため、コルセットは少々苦しいものの、締めすぎなくてもスカートのふくらみでウエストが随分と細く見えるようになっている。その基本の形に、向こう側が透けて見えるような薄く織った布をフワフワと何層か重ねてある。上半身にはレースをふんだんに。スカートの裾にはフリルを沢山使ってある。
そして、大きなリボンもスカートにはついていて……。これがピンク色や黄色のドレスだとまた「子供っぽい」と言われそうな部分もあるのに。白一色というだけで、むしろとても魅力的なものに仕上がっている、と、思う。
見せたい。
エミリーに。
フワフワと、雲みたいな。雪みたいな。天使の羽根みたいな。この素敵なドレスを。
お兄様が部屋に来た。
「なんて素敵なんだ、本物の天使のようだ」
家族のよく目が入っていたとしても言われて悪い気はしない。
「お兄様もとても素敵ですわ。金糸の刺繍が、白一色の上着には映えますね」
「あ、ああ。リリーシャンヌが白一色のドレスにすると言ったときは、大丈夫かと心配したが。とても素晴らしいよ」
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