111.聞いていないのは

「えっと、二人の事情はわかったよ。色々とあるんだね」

「ええ……」

「そうなんです……」


 アルフィアとメルティナの事情は、よくわかった。

 二人にも色々とある。これ以上、何かを聞く必要はないだろう。


「それで、ここまで聞いたんだし、ファルーシャにも聞いてもいいかな?」

「え?」


 そこで、私はファルーシャの方に顔を向けた。

 私もアルフィアもメルティナも、恋愛関係の話をしている。ということは、今度はファルーシャの番だろう。


「リオーブ様とは、どうなの?」

「ああ、それは確かに気になるわね」

「え、いや、それは……」


 私の質問に、アルフィアも乗り気だった。そんな私達に、ファルーシャは困惑している。お淑やかな彼女のことだから、こういう話は恥ずかしいのだろう。

 だが、せっかくだから聞いておきたい。こんな機会でもなければ、こういう話はきけないのだから。


「せっかくだから聞かせてよ」

「ええ、そうよ。あなた達二人には、どういう関係なの?」

「その……別に、私とリオーブ様は、特に何もありません」


 迫る私達に対して、ファルーシャはそう言ってきた。

 その言葉に、私とアルフィアは顔を見合わせる。何もない。それは、本当なのだろうか。


「そうなの?」

「はい。ただ、婚約者というだけです」

「でも……結構、いい雰囲気というか、すごく大切にされているようなそんな印象があったけど」

「そ、そうでしょうか?」

「うん、リオーブ様はファルーシャのことをいつも気にしているような感じがするし……」


 私は、ファルーシャに対するリオーブの態度の数々を思い出していた。

 暗黒の魔女に乗っ取られたと聞いて、彼はかなり激昂していたし、彼女が元に戻ってからはとても気遣っていたはずである。

 今回、私に頼んできたのもそうだ。彼女を思っているからこその頼みだったのではないだろうか。


「確かに気遣ってもらっていることは自覚しています。でも、それは別に恋愛関係とか、そういうものではないような気がするのです」

「そうかな?」

「ええ、まあ、幼い頃から婚約していましたから、彼にとって私は妹のようなものなのではないでしょうか?」

「そうかしら?」

「お二人とも、少し近すぎませんか?」


 私もアルフィアも、ファルーシャの話には懐疑的だった。

 リオーブの態度が、妹に対するもの。確かに、そう思えない訳でもない。しかし、本当にそうなのだろうか。

 ただ、彼女がそう思っているのだから、これ以上詰めても仕方ないのかもしれない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る