82.時間の流れ
「アルフィア様、大丈夫ですか? もう着きましたよ?」
「……え? 着いたの?」
あまりの不快さに目を瞑っていた私は、メルティナの声でゆっくりと目を開けた。
すると、そこには見知った学園がある。私は、かつて通っていた魔法学園の目の前に、皆とともにいたのだ。
「つ、疲れた……あの魔法、やっぱりきつい……」
「キャロム君、大丈夫か?」
「吐きそう……」
私は、ゆっくりと立ち上がりながら周囲を見渡した。太陽の位置から考えると、まだお昼といった所だろうか。
私は、学校帰りにあの丘に来ていた。時刻的には、四時くらいだったはずだ。
しかし、こちらの世界はどう考えても四時ではなさそうである。どうやら、あちらの世界とこちらの世界には、時差が存在するようだ。
いや、単純にそれは国の位置の違いなのだろうか。考えてみれば、その辺りのことは詳しく調べたことがなかったので、よくわからない。
「……間に合ったようだな」
「ええ、そのようですね……」
私がそんなことを考えていると、ディゾール様とメルティナがそんな会話を交わしていた。
間に合ったということは、何か時間制限があったということだろうか。
「色々と聞きたいことはあるけど、まず間に合ったというのは、どういうことなの?」
「実の所、この世界とあなたがいた世界というのは、時間軸が異なっているのです。こちらの世界の一年が、あちらの世界では一時間。あちらの世界の一年が、こちらの世界では一時間というように、同じ時間が流れていないのです」
「お前を迎えに行った時は、その二つの世界の時間が丁度同じ時だったのだ。もしその間に戻れなければ、こちらの世界で一年が経過していた可能性もあったということだ」
「そ、そんな……」
メルティナとディゾール様の説明に、私は驚いた。まさか、そんなリスクを冒してまで私を迎えに来たとは思っていなかったからである。
確かに、それでは再会を喜んでいる暇はない。早く帰らなければ、大変なことになっていた所である。
「今から、こちらの世界は、あなたがいた世界に比べて早く時間が流れます。ですから、元の世界に戻る時は、それ程時間は経っていないと思います」
「あ、そうなんだ……ということは、私はしばらくこちらの世界に留まらなければならないということなのかな?」
「ええ、申し訳ありませんが、そうしてもらいたいのです……とりあえず、事情は中に入ってから話しましょうか」
「……うん、そうしてもらえるかな」
私は、メルティナの言葉にゆっくりと頷いた。
優しい彼女達のことだ。私を呼び出したことには、かなり重大な何かがあるのだろう。
まずは、それを知りたかった。皆の力になるためにも、それが最優先だと思ったのである。
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