第11話#直生side


 


一瞬、息が止まった。




目が合った瞬間、全身がひっぱられるような吸引力を感じた。


覗き込まれるように笑われれば、座っているはずなのに甘い目眩を感じた。



少しの仕草で色気が立ち上がるのに。


倫さんを見上げる目は子供のように無防備で、それが俺との距離を感じさせ切なくなった。









「で、どうだった?」


帰りのタクシーが動き出すなり、倫さんに問われた。





「驚きました。笑」



正直に、そう答えた。



「悪くないかな。」



満足げに、だけど、慎重に様子を伺ってくれる倫さん。





「彼女がもし引き受けてくれるなら、十分だと思います。ありがとうございます。」



倫さんは、「そうか」と優しく呟くと、それからは黙って外を見ていた。














俺は、可愛い弟を思った。

彼女だと気づいたとき、全てに納得がいった。


夜中まで続く仕事の、わずかな合間をぬって出かけていくこと。


男の俺から見ても、はっとするほどの色気が薫るようになったこと。


それが、思い通りにならない苛立ちと紙一重で存在しているということ。






おそらく、チョコは違う。










だけど、航は。


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