第11話#直生side
一瞬、息が止まった。
目が合った瞬間、全身がひっぱられるような吸引力を感じた。
覗き込まれるように笑われれば、座っているはずなのに甘い目眩を感じた。
少しの仕草で色気が立ち上がるのに。
倫さんを見上げる目は子供のように無防備で、それが俺との距離を感じさせ切なくなった。
「で、どうだった?」
帰りのタクシーが動き出すなり、倫さんに問われた。
「驚きました。笑」
正直に、そう答えた。
「悪くないかな。」
満足げに、だけど、慎重に様子を伺ってくれる倫さん。
「彼女がもし引き受けてくれるなら、十分だと思います。ありがとうございます。」
倫さんは、「そうか」と優しく呟くと、それからは黙って外を見ていた。
俺は、可愛い弟を思った。
彼女だと気づいたとき、全てに納得がいった。
夜中まで続く仕事の、わずかな合間をぬって出かけていくこと。
男の俺から見ても、はっとするほどの色気が薫るようになったこと。
それが、思い通りにならない苛立ちと紙一重で存在しているということ。
おそらく、チョコは違う。
だけど、航は。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます