六十五話 一応高等技術
「ふぅ~~~~~、外でもこれだけ快適なお風呂に入れるなんて……本当に素晴らしいよ、アラッド」
土の魔力を使用して風呂を用意。
その際にお湯を入れる面を超サラサラにしている。
そこがかなり面倒な点なので、あまり土魔法で風呂を作ろうとする者がいない理由となる。
そして火と水の魔力を混ぜお湯をつくるという一応高等技術を当然の様に行った。
この二つにアリサよりも魔法に特化しているフールはかなり驚き、どの様にイメージして行っているのかを尋ねた。
ちなみに今、ドラングは一緒に入っていない。
(ドラングの奴、そんなに俺と顔を合わせたくないのか? まぁ、余計な衝突が起こらなければそれに越したことはないんだけどさ)
フールとアラッドが同じ空間にいれば、二人だけで今のドラングではあまり理解できない会話をしてしまう。
そう言った理由もあり、後で風呂に入ることにした。
「それほどでもありませんよ。魔力操作は毎日鍛えていますから」
自領を出発してからも毎日魔力操作の訓練を欠かしていない。
魔力操作の訓練は室内にいても行えるので、運悪く風邪を引いてしまった以外は年中欠かさず行っている。
成長しない訳がなかった。
「それが中々できないものなんだけどね。ところで、鉱山の件だけど……もし、本当にモンスターがいたらアラッドの案を試してみようかなって思うんだけど、どうかな」
フールは確認するかのように尋ねた。
初めて聞いたときはよくそんな考えを思い付いたと感心した。
しかし、あまり現実的ではない。
そう思ったが、モンスターと友好的な関係を築く……その為に自分たちはモンスターに何を対価として差し出せるのか。
それを考えた時、非人道的行為以外を考えると……意外にもアラッド以外の案が思い浮かばなかった。
「僕から提案した案です。勿論構いませんよ。当日は僕も一緒に同行した方が良いですか?」
「いや、それは……あぁ~~~~、どうしようか」
相手は高ランクのモンスター。
それを考えればアラッドを連れて行くのは万が一を考えると、やはり避けたい。
しかしパーシブル家に仕える料理人たちに戦闘の心得は無い。
だが、アラッドは既に料理人たちの腕を借りずとも料理を作れる。
そして戦闘の腕に関しては言わずもがな高い。
逃げるという一点に力を絞れば高ランクのモンスターからも逃げられる可能性はある。
そういった点を考えると、高ランクのモンスターと交渉するにはアラッドの力がますます必要だと感じる。
「俺なら大丈夫ですよ。おそらく人の言葉が分かるであろうモンスターの為にその場で作れる料理はしっかりと考えているので」
「そ、そうかい。それは頼もしいね。僕としては新しい料理を作らずとも、ハンバーグだけでも十分な気がするけど」
「そう……かもしれませんね。まぁでも、新しい料理を考えるのは楽しいんで」
前世にあって、今世に無い料理は多くある。
そして必要な食材や調味料などはアラッドの財力があれば、大抵は集まる。
子供があまり大金を動かすのは良くないかもしれないが、フールは全く咎めることはない。
逆にアラッドがギーラスのために色襲の警鈴と邪破の指輪を買い与えた時は心底驚くと同時に、その兄を想う気持ちに感動した。
「まだ鉱山が復活した原因は分かってないから先のことだけど、日程が決まったらいずれ話すよ。ところで、アラッドも鉱山に潜りたいって思ってる?」
「そうですね。できれば鉱石などを採掘して錬金術に使いたいなと考えています」
「……そうなるよね」
鉱山の中には森の中と同じく、うじゃうじゃとモンスターが生息している。
既にCランクのモンスターを倒したアラッドに勝てるモンスターは少ない。
だが、鉱山の中では森の中より不意打ちに適している。
そこを考えると、フールとしてはあまりアラッドに鉱山には入ってほしくない。
(護衛を付けたとしても、森の中と比べるとねぇ……そもそも鉱山に行くということは、森の奥に入ることになる。それだけでも十分心配なんだけどな)
加えて、鉱山に入るということは中で泊まる可能性が高い。
冒険者になるならばいずれ体験する内容ではあるが、モンスターと戦うことよりも更に心配の気持ちが大きくなる。
「アラッド、その件に関しては直ぐに答えを出せないから、ちょっと待ってもらっても良いかい」
「えぇ、大丈夫ですよ」
アラッド自身が鉱山に入らずとも、鉱石は手に入るので特に急ぐ必要はなかった。
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