第50話
「一人目、あ、ヒガドンさんだ。この人よく見るね」
「うん、すごい初期からの大ファンだからね。ブラック企業に勤めているのか、すごく疲れて帰ってきても動画みると癒されるとか……」
「ブラック企業?そういえば……お昼休みも働くみたいなこと言ってた人だ……大丈夫なの?」
「大丈夫じゃない?なんだかんだと、この時間には家にいるわけだし。土曜の生放送も正座待機するって言ってるし。本当のブラック企業なら、残業でこんな時間には帰れないでしょう」
さらっと優斗が言う。いやいや、ブラック企業って言ったの優斗だよね?自分の言葉をすぐ否定するとか。
ヒガドンさんからのメッセージ。今日は外食じゃなくてお弁当を食べました。といってもコンビニ弁当ですが。春たんの好きだって言ってたプリンも食べました。
「ヒガドンさんもプリンが好きなのですか?私も今日はお昼にプリンを食べました」
次のコメントは、豚の角煮風って何ですか?という質問だ。
「ルリーンママさん、豚の角煮風というのは、角切りの豚肉じゃなくて、薄切りの豚肉を使って、角煮風に味付けしたものです」
ママという名前がついているということは、子供がいらっしゃって、お弁当を作ってあげてるのかな?
そういえば優斗が、お弁当を考えるのがめんどくさい人が参考にしてるという話もしていたのを思い出す。
「なんちゃかるらるるらさん、さっそく四角いフライパンを買って作ってみたんですね。作りやすくなっのはよかったです。えーっと、マルーンさん煮卵お好きなんですね。ラーメンはお弁当には入れられないので、家で作りたいと思います……さん、……」
と、上から10名のコメントに返事をする。
「ありがとう母さん!あ、今日の夕飯の豚肉も煮卵もおいしかった。明日のお弁当も楽しみ!」
優斗、美味しかったとか、さらりと伝えてくる、天使か!天使か!うちの子、やっぱり天使ですよ!
と、感激していると、早く出て行けとばかりに部屋を追い出された。
ちょ、ツンデレか!
ううう。もうちょっと、こう、親子のね、日常の会話も入れていこう?
ああ、でも……。
ダイニングに戻り、スマホを取り出す。
Vtuberの動画に「息子が最近会話してくれません、どうしたら会話してくれるでしょうか」ってコメント書いたら、優斗は返事をしてくれるかなぁ?と、真面目に考えだしたところで頭をぶんぶんと大きく横に振る。
コメント返してあげてと言われて自分で返すことになったら間抜けだし、それに、そんな風に隠れてこそこそ息子の気持ちを探るようなことしてたなんてばれたら、信用を失いそうだ。
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